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Forest Aesthetics 森林美学 落葉

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               ...                                           © Daisuke Kawai



森の底の落葉が
その日最後の残光をはらんで
ふっくらとふくらんでいるように見えた
硬いブナの落葉が
ほんのすこしやわらかくなったように思えた

岩の風化の歳月と
葉の朽ちる時間との
圧倒的なちがいを思いはするが
時間軸のちがいというだけで
どちらも永劫に同じというわけにはいくまい




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Forest Aesthetics 森林美学 モアイは語る

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               ...                                           © Daisuke Kawai



イースター島のモアイは
文化人類史学的に
いろいろなことを語っていると思う

こちら岩崖で見いだしたモアイは
人類が築いたオブジェではないものの
やはり実にいろいろなことを物語っている

そもそも岩の造形に美を感じるという
ヒトの視点こそが芸術であり

蒼然とした岩肌に無機の美を感じ
そこに生きる地衣類や蘚苔類
そして樹木に有機の美を観取する

この渾然一体の美の世界観こそ
自然史を読むことの醍醐味であろう








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Forest Aesthetics 森林美学 岩肌の美

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               ...                                           © Daisuke Kawai





岩肌の美に目を向ける人は少ない
冷たい感じのする無機物だからだろうか
森の底の,そのさらに底には
土や岩の世界がある

地熱,という言葉がある
無機的な気がしない
むしろ鉱物やミネラルと共に
生命の源をささえる恵みの言葉だと思う

そういうことを忘れて
森の美を讃えてもつまらない

森の底でこんこんと湧く滋養の水は
はたして森の土壌がつくるものだが
その下に広がる岩盤というベースがなければ成立しない

鉱石からの恵み
それが泉や水源への信仰へとつながる
そしてそれはそのまま
一見冷徹な岩肌への
篤い敬いとなる






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Forest Aesthetics 森林美学 樹の時間

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               ...                                           © Daisuke Kawai




ブナの巨木に魅せられて
そればかりを撮り歩いていた頃があった

ながいながい歳月
風雪に耐えぬいてきたのであろう
威風堂々とした立姿と
美しいフォルム
そんなものにあこがれていた

あきてしまったなどというわけでもないが
いつのまにかそういうことをしなくなった

そのかわりというわけでもないが
いつの頃からか
みっしりと苔むした樹ばかりを撮るようになった
そこにもまた歳月という時間がある

それは樹の時間だ
樹が過ごしてきた時間である
苔むした緑の幹から感じる時間である
そういう意味では
威風堂々とした立姿や美しいフォルムにだって
それはじゅうぶんに感ぜられることではあるが

苔をみっしりと身にまとった樹の時間
なにか格別のものという気がするのだ









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Forest Aesthetics 森林美学 頭上の蟻

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               ...                                           © Daisuke Kawai



蟻という蟲を視るおのれの立ち位置は
いつも眼下であると
そんなふうに思い込んでいたのである

実は,頭の上でも蟲は蠢いていたのである
ふむ,これはちょっとした発見であるなと
そんなふうにやけに感心してしまったのだ









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Forest Aesthetics 森林美学 蜉蝣

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               ...                                           © Daisuke Kawai



瞑想というほどのことでもないのだけれど
ただ森の底に坐ってぼんやりしていただけのことのなのだけど
フト気づいたら目の前の笹の葉裏に
水生昆虫の成虫がひとつぶらさがっていた
端正で,美しいフォルムだ
地味な色あいだけれども,そこがまたいい
ピンと張った触覚や
翅の網目模様や
しなやかに反らせたからだにすらりと長い尾
ニンフというよりは
女王の風格すらある
ちょっとした宝物を見つけた気分だ

はかないもの
かそけきもの
めぐりあいであるとか
運のよしあしであるとか
そんなあいまいとしたことを思った









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Forest Aesthetics 森林美学 森の径

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               ...                                           © Daisuke Kawai




こういう感じの森の径が好きだ

ほてほてと
どこまでも歩きたくなってしまう

道なき道を果敢に進む,というのは気が重い
人をいざなう感じのする,おだやかな森の径が好きだ











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Forest Aesthetics 森林美学 南国の鳥

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               ...                                           © Daisuke Kawai




鳥の図鑑が好きで
よく眺めている

こんな綺麗な鳥が本当にいるのかと
感心するほど美しいものもいる

そういうものが
不意に目の前に現れることがある
たいていは
森の底でじっとしている時である

緑陰にまぎれて,全貌はよく見えないが
それだけに秘密めいて魅惑的である

目のまわりが青い鳥である
顔が真黒なので,よほど目立つ

背の微細な羽毛は
濃いパープルに輝いている

どう見ても南国を想わせる色彩の鳥である
どこか幻想的である

鳥の図鑑でいつも眺めていた紙上の存在が
ついと現実の存在となる

どきどきする
妖しく美しいものには
いろいろな秘密があるような気がする

南国の森の鳥がいるこの北国の森は
南国をも包括している世界なのかとか

いや南国の森の鳥が棲むこの北国の森は
南国のさいはてに位置しているのかとか

堪能すべき美を前にして
どうしてこんなどうでもよいことばかり
頭をぐるぐるめぐるのだろう






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Forest Aesthetics 森林美学 毀れた卵

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               ...                                           © Daisuke Kawai



森の底に
毀れた卵殻が
ぽつんとひとつきり
落ちていた

このひとつの小さな卵が産まれるまでに
どれほどのドラマがあったのだろう

このひとつの小さな卵が毀れるまでに
どれほどのドラマがあったのか

森とは,無限の生と死の坩堝である
あえなく毀れた卵の殻が
それを静かに物語っている







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Forest Aesthetics 森林美学 落ちた鷹

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               ...                                           © Daisuke Kawai



森の底にうずくまっていた
この白い鷹の姿を目にした時には
本当におどろいた

ミサゴというこの鷹は
水際に棲む鳥である
魚を食べる猛禽類である

ふだんは海岸,大きな川にいる
森に姿を見せる場合は
川幅のある渓流や
大きな湖などのそばである

それがなにゆえに
高木の連立する森の底で
こんなふうに雌伏しているのか

ああ,近くには川が流れている
その川の源は巨きな湖である

そこに棲んでいるものが
なにかのアクシデントで森の底に落ちたのだろう

眼の光が死んでいない
羽衣も美しくつやめいている
近づいても,さほどおそれるふうもなく
素知らぬ顔である

きっとまだ若い鳥なのだろう
それにしてはなかなかの肝ッ玉である









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