※ ※ ※ ※ ※ ※ クズ(葛); クズのデンプンはかって葛湯や葛粉として、根は葛根湯として薬用に用いられた。 蔓で繁殖、都会の空き地やフェンスにも絡みついているのが、あちこちで見られた。 邪魔者あつかいのクズであったが、秋の七草の一つである。 茎の基部は木質になるが、よく伸長し他の植物に巻き付いて長さ10mになる。 甘い香りのする紅紫色の花を多数つける。 全体に黄褐色の粗い毛がある。 * * * * * * * 「研究者ノート」(筑波大・奥山雄大) 荒れ地や路傍と、どこにでもある厄介な雑草ですが、 可憐な花を咲かせることはよく知られています。 でも花の香りを嗅いだことはありますか?何ともブドウのような甘い香りです。 この香りで花粉を運んでくれるクマバチを呼び寄せているのだと考えられます。 実はこの香りの主成分、アントラニル酸メチルと言って、飴や炭酸飲料、 清涼飲料水のブドウ風味の香りをつけるのに用いられている物質そのものなのです。 まだまだ残暑の厳しい中、クズの花を思い浮かべながら、 ブドウ味のジュースを飲んでみるというのはいかがですか。 * * * * * * * かつて大和国(奈良県)吉野川(紀の川)上流の国栖(くず)が葛粉の産地であった。 8月のおわり頃から9月にかけて房状の花を咲かせるが、花は葉群の下になって目立たない。 伐採跡地や放棄畑、道路端などに繁茂し、大群落を形成していることも多い。 盛夏には1日で1m程も伸びると言われるほど成長し、太い茎を伸ばして繁茂する。 (観察すると、24時間で25cm、ほぼ1時間に1センチの割合で伸びた!!) さらに、3枚1組の大きな葉で太陽のエネルギーを一杯に吸収する。 クズは何かに絡まって伸びていくので、茎を太くする必要がない。 その分、葉に栄養が廻り他の植物を枯らしてしまうほど葉を茂らすことができる。 クズの根を秋から春にかけて、地上部に残った茎をつたって、掘り採ります。 十分に水洗いし乾燥しやすいように外側の皮を取り除く、 板状、又はサイコロ状に切ってから天日で乾燥させる。これを生薬名で葛根(かっこん)と言う。 漢方薬の葛根湯(かっこんとう)、桂枝加葛根湯(けいしかかっこんとう)などに配合され、 漢方薬に最も多く配合される薬草のひとつである。 葛根(かっこん)は主に漢方処方の葛根湯の主薬となり、 葛粉で作る葛湯(くずゆ)は、風邪などに用いると効く寒気や下熱、喉の渇きや下痢止めにも効果ある。 食にも供する。葛のツルの新芽は、コクがあって美味しい!葛蔓のみそあえ(たらの芽より美味?)。 葛の芽のてんぷら(マメ科特有のコクがあり珍味)、葛新芽のおひたし、葛のおひたし。 日本では、 秋の七草として慣れ親しんできたクズだが、米国を始め海外の各地に進出するに及んで、 国際自然保護連合(IUCN)の「世界の侵略的外来生物ワースト100」植物に指定された。 その猛烈な繁殖力から「植物界のエイリアン」と言われている。 クズは、真夏に一旦成長を中止する、そして葉をたたんで水分の蒸発を防ぐ。 (古来から歌に詠まれた「裏見草はクズの別名である) 我が国の夏草の大部分は真夏までに成長をやめるが、クズはあきらめない。 秋の雨に遭う頃からクズは再び成長を開始し、2段ロケットのように茎葉を広げ、 今度は一転して光合成した栄養分を地下の塊根に貯め込むことに専念するのでる。 このライフサイクルを観察したアメリカの学者が、 「クズは成長と己のシェアー拡大以外は眼中にない植物である」と評したと言う。 それはバブル期以前の日本の商社に冠せられた言葉と似ている。 ※ ※ ※ ※ ※ ※
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