「ヒトラー演説」を読む
Sep
4
これを読み始めたら、「アドルフに告ぐ」がどうしても読みたくなったんですね。ついでに、独軍の戦車なんかも作りたくなって、在庫から引っ張ってきたりしてますが。
この本は、ヒトラーの演説を感覚ではなく、客観的なデータに基づいて読み解いたものです。例えば、政権奪取期と政権獲得後で演説内で使用している語彙にどのような変化が生じているのか、とかどのようなレトリックを使用して演説が構成されているのか、といったことです。
この本で解説されると、ヒトラー(およびその周辺)は非常に用意周到且つ緻密に演説を構成し、大衆を煽動するか、を考えていたかがわかります。熱狂を作るために、最初からインテリ層は狙わず、大衆に受けるようにする。という対象選定から、大衆に受けるには、内容を判りやすくワンフレーズで表す、とか。都合のいい仮定を前提に、二者択一を迫る構成を使うとか。言葉の巧みな言い換え、今見るとそんなアホなと思いますが、の利用など、さまざまな手法が使われていました。
客観的な分析を読むことで漠然と有しているイメージとの違いが非常に大きく、とても興味深い本でした。エピローグにある「ヒトラーをカリスマとして描くナチスドイツのプロパガンダに、八〇年以上も経った今なおわれわれが惑わされている証であろう。」が非常に印象深く残りました。