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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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蜜柑太郎

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僕は広辞苑の文字数を越える、一編の詩を綴った。それには十五年という歳月を費やした。右手に鉛筆、左手にはノート持ってうろちょろと、家の周りを歩きながら夢の言葉をしたためていった。それはそれは、とても幸せな時間。呼吸することと詩を綴ることのどちらかしかできないって、言われたら顔を真っ赤にしながら詩を綴り、死んでゆくことを選ぶだろう。それくらい詩を書くことが好きなんだ。

詩のどこが好きかって、それは自由に思ったことを自分の言葉で表現できるところだよ。素敵な言葉を探して、文として色をつけてゆく楽しみがいいね。絵を描くことも好きだけど、言葉という絵の具を使うところも好きかな。とにかく自分の気持ちを詩で表現すると最高なんだ。鳥肌が立つくらいにね。わかってくれるかなあ。

そんな詩の大好きな僕は、蜜柑から生まれた蜜柑太郎っていうんだ。
今、君笑ったでしょう。
しかもバカにした感じで。どうせ僕は桃太郎みたいにメジャーではないから。うんいいの、いいの。目指すところはそこじゃないし、詩を綴っているという充実だけで、僕は幸せななんだから。

そんな僕にある日、とんでもない依頼が迷い込んできたんだ。僕の詩を本にして出版しないか、そういう話だったんだ。しかも友だちのピンク太郎が仕組んだことだったんだけどね。

ああ、そうそう。ちなみにピンク太郎は桃太郎じゃないよ。母親がなぜがピンク色が好きで、女の子が生まれたらピンク子って名前をつけようとしていたらしいよ。だけど男の子が生まれたからピンク男って、名前にしようとしたんだって。なんだかゴロが悪いし、ダサいよね。でも、父親が、おいおいピンク男はないだろ、ってカンカンだったみたいだよ。

その後のことは、よく知らないんだけれど、ピンクに太郎をつけた安易な名前に落ち着いたらしいよ。普段そんなことは思わないけれど、これに関してはピンク太郎が可哀想だなあ、って思うんだよね。頑張れ、ピン太郎。いやいや、ピンク太郎。名前は略しちゃ駄目だよね。

また、ピンク太郎の風貌もなかなかのものなんだ。体は相撲取りみたいに大きくて、おかっぱ頭で黒の短パンを履いているんだ。それだけじゃなくて、腹掛けをしてるんだけど、そこに大きくピンクって書いてあるんだよ。可笑しいでしょ。
さらにまさかりをいつも担いでいるんだから、初めて会ったひとは悲鳴をあげて逃げて行くよ。ちなみにまさかりはプラスチック製なんだけれどもね。

一度、ピンク太郎に聞いたことがあるんだ。なんでそんな格好しているんだ、と。すると俺は「金太郎に憧れているんだ」って、真剣にいうもんだから、笑いを堪えるのに涙が出たくらいだったよ。

まあ、変なやつなんだけど、基本、僕はピンク太郎の破天荒なところは好きだよ。ケンカも強いし、意外と優しいところもあるしね。
ああ、ごめんごめん。話がずいぶんそれてしまった。

それでなんだけど。そのピンク太郎が僕の詩を勝手に持ち出し、父親の知り合いの出版社のひとに読んでもらったらしいよ。許せないよ、ほんとうにピンク太郎のやつ。たまに僕の気持ちを無視して突っ走ってしまうんだよな、まったく。

だけど出版社の担当者が僕の詩を読むのに一ヶ月かかったらしい。なんて素晴らしい詩なんだ。そう言いながら読んでくれたらしいよ。そしてその担当者はうちにも帰れず、さらには奥さんが「あんたは家庭をなんだと思ってるの」なんていわれたんだって。最終的には、妻と子どもはうちを出て行っちゃたらしいよ。

それって僕のせいだなんて、君はいわないよね。どちらかというと、僕の詩を勝手に持ち出したピンク太郎の方が悪いよね。
ああ、ごめんごめん。すごーく話は戻るけど、なんで勝手に詩を持ち出したんだ、とピンク太郎にいいよったんだ。すると僕の詩があまりにもよかったから、「みんなに読んでほしいなあ」って、いい出すからつい許しちゃったんだ。

それで僕の詩集を出すことになったんだけど、その詩はあまりにも長いので、編集者のひとに、「省ける言葉はなくしてゆこう」そういわれたんだ。それからが大変だったんだ。この言葉は、いらないかな。いや、そうではない、この言葉がいらないんだ。そんな感じで、鉛筆を消しゴムに持ち変えて推敲を始めたんだ。

詩を書く楽しみとは違い、なんだか寂しいっていうか、悲しいっていうか、切ないっていうか、複雑な気持ちで作業をしたんだよね。絵でいえば、水でキャンパスの絵の具を水で薄め続けている感じかな。僕の個性がなくなっていくように感じたんだ。

だけど、みんなが喜んで読める詩にしなくては、そんな気持ちが僕を頑張らせたんだと思うよ、きっと。
ああ、この言葉もいらないな。
うーん、ここもいらないな。
そんな感じで、消しゴムでどんどん言葉を消していったんだ。けっきょく、その作業には、三年の歳月がもかかってしまった。

よーし。全ページの作業が終ったぞ。やっとの思いで、出版社にノートの束になった原稿を持っていったんだ。すると「編集者は首を長くして待っていたんだよ」と、いったその姿はキリンになっていたので、僕はつい笑ってしまった。僕のため、首を長くして待ってくれたのに、そこ、笑うところじゃないよね。

でも、我慢できなかったんだ。だって、キリンなんだから。
まあ、いいか。可笑しいかったんだから仕方ない。
そして、起きてしまったんだな。
いや、起こしてしまったんだな。

人生最大の汚点。

編集者の一言、「言葉がひとつもなくなっている」と。

言葉がなくなってる?

そんな、バカな。

そりゃ、いらないと思った言葉は消していったさ。だけど、全部いらないってことはないだろう。僕が大好きでしたためた言葉なんだから、全部いらない言葉なわけがない。きっと、何かの間違いだ。
僕はキリンになった編集者からノートを手渡されると、パラパラとページをめくった。

うそだ、うそだ、うそだーーーーーっ

バタンっ

僕はあまりものショックでその場に倒れてしまった。そして、気がついたら病院のベットに寝ていたんだ。
僕の生きがいだった詩を書くことが、いらない言葉の集まりだったなんて考えると、どうしようもなく虚しくて。頭はあのノートようにまっ白になってしまったんだ。

僕はピンク太郎がお見舞いに来てくれても、手元にあるタオルやらテッシュを投げ飛ばし、帰ってくてと荒れてしまう始末。それでもピンク太郎は、毎日のようにお見舞いに来てくれたんだ。そしてある日、ピンク太郎がいったんだ。「ごめん」と。それも悲しそうに涙を流して。

そんな姿を見てハッと目が覚めたんだ。僕はどれだけ我がままで身勝手なんだろう、と。どんどん恥ずかしい気持ちでいっぱいになったんだ。僕にはピンク太郎という優しい友だちのためにもこんなところで、グダグダしていられないんだ。

そして、病院を退院することが出来たんだけどさ、僕から詩をとってしまったら退屈の文字しか浮かんでこないんだよ。何もなくなってしまったようだ。退屈っていうのは、ずいぶん苦痛なんだと初めて感じた。

じゃあ、何か新しいことを始めようと考えたけど、やりたいことがぜんぜん見つからなかった。あせっていた。このままでは、イライラばかりして僕は僕でなくなってしまう気がして怖くて眠れない夜が続いたんだ。

そんなある日 、ピンク太郎が変な詩を僕のところに持って来たんだ。それが笑っちゃうんだけど、「憧れの金太郎」という詩を書いてきて、僕に読んで聞かせたんだ。
えーと、どんなのだったけな、そうそう。

金金、金金太郎。俺の憧れの金金、金金太郎。イエー。

みたいなふざけた詩で、こころに突き刺さってくるものもなければ、情感的なもがなくて、おいおいって思ったわけ。「ここはさ、どうして憧れているのか表現した方がいいんじゃない、そこは四月でなくて桜とか季節を感じさせるもので表現したら」て、アドバイスをしたんだよ。

そうしているうちに、僕はやっぱり詩が好きなんだなあ、って改めて感じたんだ。これって、もしかしたらピン太郎の術中にハマってしまったのかな。
それから無性に詩が書きたくて書きたくて、手が震えるくらいに鉛筆を持ちたくなったんだ。それで僕の言葉がいらないものばかりだと思うことがあっても、そんなことどうでもいいんだ。そうだ、そうだ、と。

それに白紙になってしまった詩のノートにだって、ちゃんと意味があったんだ。中身の何もない僕のこころが表現できているじゃないか。それを教えてくれたんだ。

だから僕は、これからこころのある言葉で詩を綴っていこう。もう弱音なんて吐かないよ。この決心は本物だし、僕はほんとうに詩の大好きな蜜柑太郎にグレードアップしたんだから。

今のちょっと、臭いセリフなんて思ってない、君。そんなことないよね。僕は、いつだって大真面目なんだから。

ああ、そうそう、最後にいいたいことがあるんだけど・・・・・
いいの、ほんとうに。
じゃあ、いわせてもらうね。


親愛なる友だちへ

ピンク太郎は、ダサくて、変で、突拍子なく、お節介で、言葉少なく無愛想だけど、とても優しい最高の友だちだよ。いつもこんな僕の相手をしてくれて、ほんとうにありがとう!

そして最後まで読んでくれた君へ

ありがとう!

#小説

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