僕は何をもって弱いのか なんて考えてしまう人間だったので いつだって自分の気持ちも 君の気持ちもわかっていなかった 僕は何をもって強いか なんて考えてしまう人間だったので いつだって自分の気持ちも 君の気持ちもわかっていなかった そんな僕が初めて知ったんだ ごめんなさいもさよならも言えないまま 君のカタチは無くなり初めて抉り出された涙 弱さを知ってしまった僕は 強く生きて行くことなど考えられなかった それでも心からありがとうを伝えたいと思っている
ベランダの椅子に座り込むと 猫のハナとユメが黒目を大きくして 手すりに上がり通りを見ている タイヤの擦る音は 波のように打ち寄せては返す街の海 風は風鈴をやさしく鳴らし コーヒーの程よい苦味に いつかのどこかの憧れを夢みている 大波のトラックが過ぎてゆく 小波の乗用車は追いかける 私は揺れない船の上で漕ぐこともなく 周りを動かし繋がってきた時間の不思議に すこし戸惑いながら残りのコーヒーを口にする そして枯葉が迷い込んだ床に横になると 説明しようもない涙が流れ出しては その心地よさに救われていた ユメとハナはもう部屋へ戻っている 私はもう少し街の海に浮かんでいたい