バラトンフュレドの泉と並木道
May
8
駅から少し入った緑地にある『アンナ・グランド』に宿を取った。このホテルはハンガリーの著名人が7月26日の「聖アンナの日」を祝う大舞踏会「アンナ・バール」の1825年からの会場であった『ホルヴァートの家』をホテルとした建物である。その舞踏会の会場で朝晩のビュフェを戴いた。夕食がビュフェスタイルと言うのはコンチネンタルの高級ホテルでは珍しいと思うが、舞台が『ホルヴァートの家』だと思えば、ビュフェスタイルの方が舞踏会に居るようで楽しかった。
さて、このホテルのすぐ前には、バラトンフュレドの名物の一つ『コッシュートの泉』がある。
コッシュートはハンガリー独立運動の指導者コッシュート・ラオシュの名前から取られている。ホテルの並びには19世紀に創立された療養院があり、今でも長期滞在で療養を受けている人々が集う。
この泉、いわゆる飲用鉱泉で心臓病に効用があると言われている。療養院の患者はもちろん、一般の観光客も飲み放題で公開されている。
と、なれば心臓病でも何でもないが、ペットボトル持ち込みで汲まずばなるまい。
泉の建屋には、押しボタン付きの蛇口が設えてあり、ボタンを押すと微かなモーター音と共に鉱泉が流れ出る。
一口、口に含めば、凄まじい鉄分の味。んー、貧血に効きそう。
女房は、一口で「ダメ」だそうだが、私はそうでもない。旨いわけでは無いが、十分に飲用に耐える。何せタダだし。
500mlのペットボトル2本を満たして湖畔の散策に出る。80mも行けば湖畔に至る。ハンガリーの海は波も無く静かに揺蕩うていた。
すぐ左手の続く並木道はアジア人初のノーベル文学賞受賞者、インドの詩人タゴールが療養し快癒した事にちなんで『タゴールの散歩道』と名付けられている。全長300mほどの閑静な並木道だ。夜も街路灯の灯りが美しいが、やはり早朝、バラトン湖の靄にかすむ時間帯が一番美しい。秋の紅葉の頃となればなおさらだろう。
夜、部屋に戻れば鉱泉を入れたペットボトルは鉄分が酸化して少し濁っていた。