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初冬の霧(カーネル笠井)

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初冬の霧(カーネル笠井)
中学生の頃、通学路の途中に1.5km近い田んぼの中の直線の道がありました。朝寝坊な私がその道に差しかかると、同じ中学生の姿ははるか前方にしか見えませんでした。これに追いつけば遅刻せずに学校に着けるといった状況で、毎朝が駆け足でした。

そんな道が初冬になると深い霧に包まれ、わずか3m先も全く見えなくなってしまうという日が4、5日もあったのです。そのころは、これは単なる自然現象としか考えていませんでしたが、後になってその一番の原因がわかりました。それは、お米を脱穀した後に残ったわらをこのころになって田んぼで燃やすことでした。このときに出た煙の粒子が次の日の朝になっても空気中にただよっており、それが冷えた空気中の水蒸気が小さな水滴になるための核になり、霧ができやすくなっていたのです。以前は家畜を飼っている家が多く、このわらはその家畜のために使われ、たい肥作りにも利用されていました。そのうち家畜を飼う家が少なくなり、利用価値の少なくなったわらは田んぼで燃やされ、わずかな肥料分として使われてようになり、これが初冬の霧の原因となっていたのです。

霧の中では数m先を歩いている人の話し声は聞こえるのに姿は全く見えませんでした。ところが、こんなに深い霧なのに中は結構明るかったのです。この霧は、きっと地表から10m足らずの高さまでしかなかったのではないでしょうか。もしそのとき、近くの山に登れば、山に囲まれた盆地が真っ白い霧の中に包まれている光景が見られたのかも知れません。きっと幻想的な光景にちがいないなどと想像してしまいます。


『氷点下何十度という南極なのに、そこで息をはいてもその息が白くならない。』というCMが放送されています。南極の空気にはちりやほこりといった粒子がほとんど存在していないほどきれいなため、息に含まれている水蒸気が冷やされても、核になる粒子がないために水滴になりにくいのが原因なのだそうです。これを観て、ちょうど私が中学生の頃に体験した初冬の深い霧とは反対のでき事があるんだ、などとなつかしく思い出した次第です。
                             カーネル笠井
#自然

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