昔の家には「土間」と呼ばれるスペースがありました。家によってはそこに炊事場があったり、あるいは農作業の工具が置いてあったり、さらにはそこに涼を求めベタッとくっついたままの犬がいたところもありました。
家に入ってまず足で踏む感触が今でも忘れられません。土でも結構固められてはいたものの、でも土のやわらかさが足の裏から足全体に心地よかったことも覚えています。そして何より夏でもひんやりとして涼しかったことが小さな子どもたちには好感をもたれていました。そんな自分も夏にはあのひんやり感が好きでよく寝転がったものでした。でも、汚れないということもまたお気に入りの理由でもありました。
家に入ってすぐに居間に上がらず、この空間でしばしの立ち話もいいものでした。まあ、それはコース料理の前菜のようなものでしょうか。最近では都会の居酒屋やバーなどでもこのようなスペースを構えているお店が増えています。もちろん、土の「土間」ではなく石や木を用いたり、あるいはちょっとしたオブジェを置いてみたり、なにか訪れる人の心を和ませる空間に改めて気付かされています。日本家屋の素晴らしさはそのやさしさです。それはまるで自然の物に心があるかのようです。
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