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20220508 石井桃子さん

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前々からここに書いているけど、本当にすっかり、石井桃子さんにハマっている。
エッセイ集「家と庭と犬とねこ」を読んだのは、表紙が好きだったから。
本の表紙というのは、ドラマチックなイラストが、でかでかと載っている、
まるで広告のようなデザインは好きではない、と常々思っていて、
この本の表紙はちょうどいいなあと惹かれて読んだのが始まり。
プーさんやピーターラビットを翻訳した人らしい、ということだけの知識で読んだ。
普段私はエッセイはあまり読まない。物語が好きなので。
だからこれだけでこのエッセイを手に取ったのは、我ながら少し不思議。

子供の本をたくさん訳したこの人が、1907年生まれで、生涯独身であったこと、
戦時中になぜかメダカを一所懸命世話していたことや、
関東の人で東京で仕事してたインテリなのに、戦後すぐは東北で農業をしていたこと、
死んだ友達の家に住んでるとか、言葉の端々の繊細さとユーモア、
なんだかとっても面白い人のようだ、私この人好きだと感じた。

それで、この方が書かれた唯一の長編小説「幻の朱い実」を読んでみることに。
101歳で亡くなったこの方が、80代で上梓されたという物語。
そしたらもう、仕事の合間に読むのが楽しみで楽しみでたまらないこと!
面白くってたまらない。
まだ戦前の独身女性が、うんと仲のいい友達同士でつるんでいる姿が、
ものすごくリアルに感じて、切なかったりドキドキしたりして読み進めた。
読み終わった後ついまた上巻を開いてしまうくらい、面白かった。
こんな面白い小説が未読だったなんてと思った。

先に「家と庭と犬とねこ」を読んでいたので、
ご自身のことを主人公のエピソードに使われているのがわかる。
でも、そうなるとそのほかの分からない部分がめちゃくちゃ気になってくる。
実際には、どういう人生を生きられたのだろう?と思って、「ひみつの王国 評伝石井桃子」も読んでみることに。
これは尾崎真理子さんというライターさんが、ご本人にインタビューをしたことと調べたことをまとめて石井桃子さんの人生を辿る本。
興味が無かったらつまらないだろうけど、すっかり彼女のことが気になっているので、これも面白くてたまらない。
「幻の朱い実」の主人公と、実際の石井桃子さんの人生の違いがはっきりわかって、謎が解けるし、
創作活動のヒントもわかって、本当に読んでよかった、良い本だった。

生涯独身で子供のいなかった彼女が、子供の本に関わり続けたこと、
簡単に説明できるようなものではないけど、
どんな縁があって、どんな運命でそうなったのか、なんだかとても合点がいった。
私はとても、励まされた。
私もどんなふうに絵描きとして活動していく人生になるのか、まだ先が楽しみのような、元気が出たのだった。


今は、「幼ものがたり」を読んでいる。
石井桃子さんが子供のころのことを書いた回想記。
100年前の女の子が、「夏休みの日記」を「夏体みの日記」って書いちゃって、
泣きそうになっているのを、手先の器用なお父さんが剃刀を研いで、
紙を削って「体」を「休」に直してくれる、とか、私はなんだかときめきを感じる。

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