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栃木県の歴史散歩

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芦野氏の下の庄陣屋

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 本県の近世後期における陣屋は、黒羽、喜連川、高徳(塩谷郡藤原町)、吹上(栃木市)、足利、佐野の小藩大名をはじめ、真岡代官所、日光奉行所、物井(芳賀郡二官町)など十数力所を挙げることが出来るが物井の桜町陣屋跡の外は、いずれも建造物は撤去さ
れ往時をしのぶよすがもない。だが、芳賀郡市只町赤羽に、常時、代官が執務していた陣屋構えの屋敷が、江戸時代の面影を残したまま現存しているので、その概要について述べてみよう。
 寄合衆=参勤交代する旗本─芦野氏が芳賀郡赤羽に代官所(陣屋)を設けた年代は、はっきりしないが、史料を総合すると、近世初期、正保―明暦時代(17世紀中ごろ)と推測される。
 「寛政重修諸家譜」には芦野氏について「慶長四年政泰遺跡を継ぐ。同五年、幕府上杉景勝(会津藩主、反徳川軍)征伐のとき、声野は景勝の所領に近き故、仰せを受け、芦野にて其境を守る。この年、下野内にて三百石加増、旧地に併せて千百石を知行す。七年千六百石の加恩を受く。資泰を経て資俊に至り、正保三年十一月十二日遺跡を継承後、新懇を合せて下野那須、芳賀二郡のうちで三千石知行」とある。
 また陣屋の所有者藤平氏所蔵文書には「慶長年中、先祖藤平伊賀、西方より引越、下赤羽に居住す。二代目伊賀、寛永年中、上赤羽に引越、二男八弥取立(中略)その後、明暦二年殿様より御書付を以って俵数七俵下さる…」とある。
 右の古文書も含めて検討すると、藤平氏は慶長年代に下赤羽に住み、寛永年間には上赤羽(現在地)に移住している。一方、芦野氏は正保年代に芳賀郡上赤羽を含めて8カ村を領知。明暦2年には芦野氏老職神田外記から藤平与五右工門へ給7俵を与えている。これらを考え合わせると、正保から明暦の間に代官所が設置されたようだ。
 通常、領主から名主に下される給米は年に2俵か3俵だが、玄米7俵も与えられたことは、藤平氏が代官補佐役として取り立てられたためと考えられる。
 芦野家では、那須郡芦野にある陣屋(上ノ庄)に対し、芳賀郡上赤羽陣屋の支配範囲を下ノ庄と呼び、下ノ庄代官所と称した。そして、代官には、芦野家の重臣が任命され派遣されていた。代官は「御知行所取締りのため住居ヲ仰せつけらる」という辞令を受け、声
野から、はるばる芳賀郡赤羽の下ノ庄陣屋に着任したわけである。代官の年給は玄米30俵、身分は御中小姓で、着任の日から下ノ庄陣屋に居住することになる。
 これに対し、藤平家は、声野領8カ村の名主として士分待遇の特権を与えられ、代官の補佐役として実務一切を担当した。年給7俵のほかに、役料として玄米5俵が支給され、時には郷村日付役も命ぜられ、この役料二俵が加算され合計14俵という給米を受けた。
 藤平氏は、代々縫之丞を名乗り、芳賀郡8カ村の郷村取締、代官補佐役の身分だったが、文化元年(1804)には、正式に代官格に命ぜられた。その後「御中小姓格」に取り立てられ、代官と全く同格の身分となった。
 芦野領下ノ庄陣屋だった藤平氏の居宅の建造年代に関する記録は全く見当たらないの伝承によると、創建以来一回も火災にあったことがない。屋敷も大体、江戸初期そのままの構造を保っている由という。建て坪は現在189.75坪(651.9㎡)。うち居宅が88坪5合。倉庫20坪、石倉44坪。このほか水車、雨屋、門、へいなどが昔の形をとどめている。
 建造物の大半は、ぐるっと幅2mほどの川に囲まれその西には、満々と水をたたえた堀がめぐらされている。
 敷地は約1,805坪。これに続いて、畑地が4反4畝3歩。これは前方および東方にのびており、この敷地の中に招魂社、青麻(あおそ)神社などがまつられている。
 さらに畑から地続きに、東から北方へ山林がぐるりと屋敷を囲んでいる。この面積が2町3反6畝6歩。門を入ると、庭に面した玄関がどっしりと昔ながらのかや屋根を支え、重厚な落ちつきを保っている。
 玄関から右手へ続く廊下も古風な趣向を見せ、さらに奥座敷の書院造りは、今にも次の間からチョンまげ姿の代官が出て来るにふさわしい造り。床の前の窓の両側の羽目板に描かれた絵は、絵の具が薄くはげ落ち、年代の古さを物語っている。控えの間なども、歴史の面影が、ここ、かしこに見られ、貴重な陣屋遺跡であることがわかる。

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