日本のイメージ戦略:外から見ると
Oct
27
アメリカや韓国に住んで、そこから日本を見ると、日本という国がどれほど素晴らしいかよく分かります。コロナ一つ取ってみても、世界一リスクの高い最高齢国の日本がここまでうまくやっているのは、称賛に値することです(このままがんばれ!)。
先日、菅首相が所信表明で「温室ガス2050年までにゼロ」と発表しました。実際に地球にとって温室ガスの削減は必要か?という議論はありますが、こういう「世界・社会に貢献する政策」は、日本のイメージアップにも役立ちます。何なら実際に実践できなくても良いのです。
そんな中、中国は10/27日、「2035年にガソリン車全廃」政策を発表。やりますね。これから中国はこういう政策をどんどん打ち出して、世界から見た中国のイメージを変えていくでしょう(実際に実行せずとも、イメージ戦略としては大)。言ってみれば、粗野で野蛮なイメージの国から、クリーンで環境問題を先導する知的なイメージの国へ。
日本は誠実な国なので、どうしても「本質」にこだわります。本当に温室効果ガスの削減が必要なのか?――必要ないから出しまくろう――というのが本当は正しい回答かもしれませんが、しかし波に乗っかってその方向性でマーケティングや開発を進めていくのは、企業ならどこでもやっていることです。日本の国もここはこの波に乗っかって、世界中が好きそうな方向性で優位に立てばいい。
ちなみに、日本のイメージを大きく下げている事柄の一つは、象牙の輸入です。WWFによると、年間2万頭超のアフリカゾウが密猟の犠牲となっており、その目的はただ「象牙」だとされています。私は仕事でアフリカ関連の記事を翻訳する機会があるのですが、牙が切り取られたゾウの死体のくだりはには怒りがこみ上げるほど――しかし悲しいかな記事の結論は、「‟アジアの国”が象牙を欲しがっている」です。どの国でしょう。
未だ象牙市場を維持している日本は「死んだゾウの牙を輸入しているので問題ない」と反論していますが、「高価で買い取る市場」と「密漁」の関係は誰もが怪しむものです。李下に冠を正さず。「イメージ戦略」の観点で語れば、いかにも怪しい動きはやめた方が良いということです。
日本政府は「象牙の輸入によりアフリカの経済をサポート」ともしていますが、こういう「イメージダウン甚だしい方法」でアフリカをサポートするのはお金の無駄。どうせお金を使うなら、イメージアップが可能な方法でサポートすべきです。
中国は既に2017年に象牙市場を閉鎖。韓国もこの象牙問題は、鬼の首を取ったように日本を非難しています。慰安婦問題他とセットで喧伝すれば、イメージダウンの相乗効果が得られますからね。日本は素晴らしい国なのに、イメージ戦略的に脇が甘いのです。一方で韓国は映画産業や韓流スターにより、イメージアップはかなり先手をいっています。
「動物保護」の意識は時代が進むにつれて高まるばかりで、逆行することなないでしょう。それはまるで「先進国度」、あるいは「野蛮度」を計る定規のように捉えられているので、この分野でつけ込まれるのではなく、利用するぐらいの動きが欲しいところ。
センシティブな問題ですが、イルカ漁やクジラ漁(‟調査捕鯨”にしては、年間850頭は多過ぎる)も「イメージ戦略」の観点から見ると、やめ時かもしれません。日本の伝統を守りたいのは私も同じですが、悪いイメージが大き過ぎます。
例えば、私たちが中国の猿の脳を生きたまま食べる方法や犬肉祭りを見た時、どんな印象を持つでしょう。野蛮だと思うし、「伝統」だと言われても納得いきません。欧米諸国の人から見ると、日本のイルカ・クジラ漁はまさにこの印象。なぜ欧米諸国の目線で私たちの食文化を変えなければならないのか、という怒りもごもっとも。でも世界各地に少女像がたてられるなど日本のイメージダウン政策が絶え間なく展開されている現代、完全防備で隙のない日本でいるために必須の戦略的選択です――負けて勝つ。クジラが増え過ぎたら、その時、日本の出番です。
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