15.ある不育症患者さんの手記(2−2)
Feb
25
1年後、
子供が欲しいとずっと願っていたのに、
いざ高温層が続くととても複雑な気持ちになった。
妊娠しているのか早く知りたい。
でも、それを知ってしまったら、
また、赤ちゃんが死んでしまうのではないか
という 恐 怖 心 と毎日戦っていかなくてはならない。
そんな気持ちが交錯していた。
複雑な思いを胸に検査薬の判定は 「 陽性 」。
手が震えた。
ある日、
妊娠した事を友人に伝えた。
「 うわぁー、よかったね。 」
「 でも、また前みたいな事になるんじゃないかって不安で・・・。 」
「 えー!そんな事思っていちゃ駄目だよ。 」
ひどい言葉を言われた訳でもないのに、
涙が溢れそうになった。
私の不安な気持ちは、認めてもらえないんだ。
昔からの友人であっても同じ経験をした人でないと、
気持ちは理解してもらえないのだろうか?
それからは他人の言葉で傷つくのを恐れ、
夫と自分の両親以外には妊娠を報告することができなかった。
今回は、大きな総合病院を受診する事にした。
健診の前日から、緊張と不安で一杯になり、
病院に着いて血圧を測るといつもより高く、
心拍数も100を超え、
まるで運動した後のように心臓がドキドキしていた。
それでも、なんとか無事に週数を重ねていった。
妊娠30週。
前日、寝る前には、お腹を力強く蹴っていた胎動が
朝になってみると全く感じられない。
昼頃になり、病院へ電話を入れた。
日曜だったが、ちょうど主治医が当直で、すぐに病院に駆けつけた。
エコーで様子を確認する先生の肩がガクッと落ちた。
「 どうして。心臓が止まっている。えー、なんで、どうして。 」
私も、あれだけ毎日元気に動いていた子が、
今日はピクリともしないという事が異常なことだと分かっていたが、
現実を受け入れたくなくて、
「 本当ですか?本当なんですか? 」と、
何度も聞き返した。
あまりにも悲しい事実を突きつけられ、涙も出なかった。
これ以上、
お腹に赤ちゃんを入れておくことも出来ない為、
子宮口を広げる処置がとられ、
翌日、陣痛促進剤を投与された。
「 産 み の 苦 し み 」というけれど、
後に喜びが待っていない苦しみは、
どう乗り越えたらいいのだろうか。
私は、1人目の子をこの目でみてあげられなかった事を
後悔していた。
だから、今回は、
この手で赤ちゃんを抱きたいと思っていた。
分娩台にタオルで包まれた赤ちゃんが連れてこられた。
私にそっくり。
まるで眠っているかのようだった。
お腹にいた時のように話しかけ、
決して忘れないように瞼に焼き付けた。
夫が涙を流していた。
初めてみる涙だった。
子供が死んでしまったと知った時、
自分も一緒に
死にたかった。
けれど、子供の姿を見て、
「 命を無駄にしてはいけない。
この子が経験できなかった喜びも、苦しみも、
全て、私が引き受けて生きていかなければならない 」。
そんな風に思え、夫にも話し、また2人で涙を流した。