不育症の初診のとき、
まず、その一連の検査の内容を説明しています。
その中で、最初にお話しすることは、
たとえ、ご夫婦とも染色体異常という
遺伝的な問題がなかったとしても、
偶然的な奇形精子、あるいは偶然的な未成熟卵により、
約15〜20%の確率で、
胎児の偶然的な染色体異常が発生しているという事実です。
つまり、
だれでも、もう絶対に流産はしたくないと思われますが、
残念ながら、約2割弱の確率で、
「運命の流産」、
言い換えれば、
「わずか一ヶ月前後だけの寿命をもらった赤ちゃん」 が、
存在しているのです。
この運命は受け入れるしかありません。
人生においても、
この 「8割の哲学」 は、大切なことだと思います。
何事も、10割、100%の達成をめざして、
日々、努力していますが、
いろいろな側面から見た場合、
たぶん、8割の達成度が、ベストではないでしょうか。
2割の不満は、その後の人生の糧になりますが、
10割の成功は、たぶん断片的な現象であり、
その後の人生の多様性を狭くするように思います。
30年以上にわたって、
不育症のご夫婦を診させていただいていますが、
どうしても、赤ちゃんを抱くことができなかったご夫婦も
いらっしゃいます。
そのようなご夫婦を、私は忘れることはできません。
赤ちゃんを抱きしめることはできなかったとしても、
ご夫婦で、それまで、いっしょに頑張ってきた日々、
その過程が、
とても尊い時間であったと思います。
治療の限界に阻まれて、あるいは、
年齢的な大きな壁に阻まれて、
そろそろ、リタイヤを考えられているご夫婦に、
私からは何も言えません。
せめて、少しでも、この治療の過程のなかで、
ご夫婦に、
何か意味のある絆ができればと願っています。
わずかな時間の命であっても、
あなたの子宮のなかで、
何人も生きていたのは、事実ですから。
「おなかもこころも腹八分目」、
2割の不満ばかりに目を向けず、
8割の平凡を見つめ直してみましょう。
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Posted at 2009-06-11 06:50
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