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- 111. 着床障害における卵(受精卵)の異常という運命の確率
着床障害の定義は現在、世界的に未確定です。
欧米の生殖研究者の多くは、
ハイレベルな体外受精クリニックにて、
移植可能な卵(受精卵)を
3回以上移植しても妊娠成立しない状態を
着床障害と定義しています。
着床障害の原因として、
一部の体外受精専門クリニックの先生は、
現時点においても、
すべて卵(受精卵)の質の異常
(偶然的、必然的な染色体異常という運命)が原因
であるかのような説明をされていますが、
実際は違います。
欧米の一部、特に米国においては、
着床障害の治療のひとつとして、
着床前診断(着床前スクリーニング)が
行われています。
その検査方法もFISH法からCGH法へ
改良されているようです。
その最近の研究報告によれば、
(Fertil Steril, 94:875-87, 2010)
初期胚(分割卵)での染色体異常率は約65%、
胚盤胞での染色体異常率は約45%、
であったとのことです。
それ以前の同様の研究論文においても、
卵の染色体異常率(質の異常率)は
約60%前後と
報告されています。
ここで、単純計算してみますと、
胚盤胞移植して、
運命的(卵の質的)に着床できない確率は、
一回につき、多くて約45%ですから、
(染色体異常のある卵がすべて
着床できないのではなく、
異常の種類によっては
運命的に、
化学的流産、妊娠初期流産となっていきます。)
三回連続して
運命的(卵の質的)に着床できない最大の確率は、
45%x45%x45%=約9%
となります。
これらの根拠により、
3回以上移植しても妊娠成立できない状態を
着床障害と定義して、
卵の質の異常以外の原因、
つまり、
「 子 宮 内 環 境 の 状 態 」
を、検査する必要がある
と考えられているのです。
私は、現時点では、
一流の体外受精クリニックにて胚移植を受けるも、
5回以上の移植治療が妊娠反応陰性、
あるいは、化学的流産に終わった状態を
着床障害と考えています。
当院での2008年5月から2年間の
着床障害に対する治療成績は、
一回の治療につき、
妊娠維持:出産成功率が
約34%でした。
治療内容は
心身の両面より、
複数の危険因子を見つけて、
心身両面からの予防治療となっています。
過去に20回の胚移植治療を受けるも、
すべて不成功であった40歳台の患者さんが、
当院の検査に基づく心身調節療法を受け、
現在、
妊娠中期で順調に経過しています。
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