ずい分と前のことですが、ある2月の日曜日の早朝、以前住んでいた吉祥寺から千歳烏山に向かうバスの中にいました。何の変哲もない晴れた日曜日でした。暖かいバスの中でついうとうとと眠りかけていたとき、そのバスが突然急ブレーキをかけて停車したのです。何か事故でも起きたのかと思いバスの前方を見たところ、前面のガラスは真っ白にくもっていて何も見えませんでした。そして横の窓ガラスも真っ白になっていて、手でふいてもそのくもりは取れませんでした。まるでバス全体が厚い雲の中にでも入ってしまったようでした。周りの乗客達もざわめき始めたとき、運転手がワイパーを動かしました。すると前面のガラスのくもりはきれいに取れ、そこから見える景色はさっきと同じ何の変哲もない晴れた景色でした。冬のこの時期、窓ガラスがくもるのは必ず暖かい内側の方です。ところがこのときはバスの外側が一瞬にしてくもってしまったのです。
少し考えてようやく謎が解けました。バスの内部よりも暖かくてしめった風の中にバスが入ったからなのです。そう、春一番の風だったのです。さっきまでは周りの空気よりも暖かいバスの窓ガラスでしたが、この春一番の風よりはずっと冷たかったため、暖かい風に含まれていた水蒸気がこの窓ガラスによって冷やされて水滴になって窓ガラスについたのです。生涯まだたった1回だけの経験ですが、不思議なことってあるものですね。
ここにきて、真冬に逆もどりしたような寒い日が続いています。春一番が本当に待ち遠しいですね。
カーネル笠井
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