緊張感と、それが解かれたときの開放感はとても素晴らしいもので、生きていくための楽しみともなるはずのものです。ですから、うまくこの緊張感を利用できればやる気のもとにもなり、その結果と合わせてとても実りの多いものになるはずです。ところが、その緊張感のせいで大きな失敗をすると、人はその緊張感のもととなるものをさけ、自分の行動を制限しがちになります。
「人前で話をしたときに、足がうまく前に出なくてへんな歩き方になってしまったり、声がふるえて考えていたことが言えずに失敗してしまった。」「大事な試験を受けたとき、指がふるえたり頭がボッーとしてしまって、何も考えられなくなり失敗してしまった。」こんな多くの声に、人が緊張する仕組みを調べる実験が行われました。そして、その結果は意外と単純なものでした。
まず、この緊張感が悪い方向に働くと、人の呼吸量が知らないうちに少しずつ少なくなってしまうのです。その結果体の中のいたる所で酸素が不足して、歩こうとしてもすぐに足が前に出なくなったり、指が思うように動かなくなってきます。心臓も体中からくる酸欠の情報を受け、多くの血液を送り出すために動きがはげしくなりドキドキしてきます。でも酸素が不足しているのでその効果がありません。やがて頭でも酸欠が起こりボッーとしてくるのだそうです。つまり、緊張が悪い方向に働くと人は息をすることを忘れてしまうのです。これでは、その後の行動の結果が良いものになるわけがありませんね。逆に、緊張感をうまく利用している人は、大きく息を吸って気合いを入れてから物事に臨みます。新しい空気をたっぷりと吸い込んで、これならきっといい結果が出せるはずですね。
ふつう人間は、1回の呼吸で肺の中の空気の約6分1を交換しています。ですから肺には古い空気がいつもたくさん残っているのです。でも、静かにしているときにはこれで充分なのです。ただし、走ったりする等の運動をするときには当然酸素が足りなくなるので、大きく、そして速く呼吸しなくてはなりません。これを見ていて思いつきました。ヨガだとか太極拳だとかには必ず呼吸法というものがあります。それを見ると、途中いろいろなポーズを取りながらするのですが、結局は深呼吸をしているのと何ら変わりがないと思えるのです。
大事な中学入試、緊張してふだんの力があまり出せなかったでは悔やみきれません。そうならないために、試験前の深呼吸をおすすめします。試験前、気がついたらすぐに、とに角5〜6回の深呼吸をすることを何回か繰り返すのです。でも、緊張しすぎて深呼吸をすることも忘れてしまったのでは何にもなりません。ですからふだんの模擬試験のときから試験前には深呼吸をするくせをつけておきましょう。
おまけの話ですが、深呼吸は緊張に効くだけではありません。ちょっとした頭痛や腹痛など、多くの体の不調にも効果があるのです。こんなに安くて即効性のある薬って他にないですよね。
(カーネル笠井)
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