小学生が中学受験のときに出せる力は、ふだんの力の約70%だと言われています。つまり、家でやる過去問演習では100点満点中90点が取れていても、実際の試験だとその70%の63点しか取れないことになるのです。しかし、どの学校の合格最低点もだいたいが60点前後ですから合格はできるのです。そこで、ふだん50点しか取れていなかった生徒が120%の力を出して60点を取ると、もっと多くのミスをした成績上位の生徒と、合格・不合格のどんでん返しがおきるのです。大人の世界ではめったに起こらないようなことが、小学生の場合はかなりの確率でこれが起きるのです。しかし、そんなどんでん返しをおこして合格していった生徒には、私の知るかぎりではある共通した条件があるのです。そんな生徒の典型例を紹介します。
Aさんは試験当日の夕方、まだ合格発表が行われる前に教室を訪ねてきて、その日の報告をしてくれました。
Aさん「先生、少し前にやったことがあるのと同じ問題が国語で出たよ。だから良くわかったからきっと合格するよ。」
私「それはラッキーだね。運が良くなってきたから、きっと大丈夫だね。算数の方はどうだった。」
Aさん「まあまあできたと思う。」
と興奮しながら答えてくれました。私は内心、2〜3問多くできたかろといってふだんの力からすると、可愛そうだけれども合格はちょっと難しいかなと思っていました。その結果は、彼女の予想通りの『合格!』でした。後で思い起こしてみると、そのときの彼女はかなり興奮していました。おそらく、朝9時ごろに試験が始まり、国語の問題文を読み始めたときに『この問題はやったことがあるわ。がんばれば合格できるかも知れない。』と考えたときから、彼女の頭の中のギアが切り替わったのだと思います。トップギアでアクセルは踏み込みっ放しといった状態です。その興奮状態が何時間も過ぎた夕方になっても続いていたのです。ですから、国語の残りの問題でも、算数の試験のときもです。これならきっと、ふだんの力の120%、いやもしかすると150%くらいの力を出していたのかも知れません。
B君は試験の翌日、自分の合格を確かめてから報告に来てくれました。やはりAさんと同じような興奮状態です。1教科目に算数があり、そこで直前にやったことがある問題が2〜3問出たと言っていました。彼もこの2〜3問ができた程度ではどうにもならない学校でしたが、おそらくその後の国語、理科、社会の時間でも、人生最大の集中力で乗り切ってきたのだと思います。次の日になってもその興奮が続いていたのですから。
でもこうなるためには『その学校にどうしても入りたい。』という気持ちと、『多くの類題演習をした。』という2つの条件は欠かせません。特に、1教科目に国語があり、その国語の課題文が直前に読んだことのある内容のものが出題されたときに、このどんでん返しが一番多く起こっているようです。最近の入試における人気作品、人気作家もある程度わかっていてホットラインでも紹介されていますので、それらの作品にはぜひ触れておきたいところです。
しかし、今までがんばってきて何とか合格できそうなのにこんなどんでん返しにあって不合格になったらたまらないですね。次回はこうならないための簡単な方法を紹介します。
カーネル笠井
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