ストレスはほどほどに (カーネル笠井)
Oct
16
ずいぶんと前のことですが、何匹ものサルをそれぞれのオリの中に入れておき、サルのいやがるブザー音を定期的に聞かせてその経過をみるという実験が放送されていました。このブザー音は、少し高い所にあるボタンを押すと止められることをサルたちに教えておいてから始められたのです。サルはこのブザー音がきらいなようで、はじめはすべてのサルが少しジャンプをしてそのボタンを押して音を止めていました。しかしその音は、その時に止めても時間がくると1日に何回も鳴る仕組みになっていたのです。すると何日かたつと、ブザー音がするとすぐにそれを消すグループと、消そうとはしないグループに分かれていたのです。そして、消すグループのサルはそれ以外のときも活発に動き回っています。一方消さなくなったグループのサルはというと、うつ伏していることが多くなり、気力がなくなったようにあまり動き回らなくなってしまいました。まずここまでが報告され、これを見た多くの人は「サルでもポジティブな考え方をするものは、活動的な日々を送っている。人もこのように生きるべきだ。」という解釈がされ、人前でもこれが引用されて話されたのです。ところが、この実験にはまだ続きがあったのです。この実験をそのまま数ヶ月続けたところ、あの活動的に動き回っていたサルたちは胃かいよう等の病気にかかりほとんどが死んでしまったのです。ところが、ブザーを消しもせず無気力な行動をとっていたサルたちは病気にもならずに生き残っていたのです。
結局、活動的に動き回っていたサルたちにとってブザー音とそれを消す作業自体がしだいに大きなストレスになっていったのです。無気力と思えたサルたちは、そういったストレスから逃れるための一つの手段として回りのことにはあまり反応しないうつ状態になっていたのだと思います。
人の場合も同じではないかと思いました。つまりうつ状態の多くは何かのストレスから自分の体を守るためなのです。ですからこれを完全に治すには社会も含めた環境をそっくり変えなくてはならないのだと思います。多少のストレスはやる気のもとにもなりますが、ストレスもほどほどにしないと体の病気、あるいはうつ病の原因になってしまいます。
小・中学生にとって減る気配のないいじめ問題や、新しい価値観がどんどん生まれてきて、ストレスの原因となるものが増える一方のようです。最近では“オンリーワン”が美徳のように言われています。“オンリーワン”が悪い訳じゃないですが、今度は“オンリーワン”だと言って価値観がどんどん変化していくことが子供達のストレスの一因になっているような気がします。
本来子供達にはこういったストレスを解消するための手段が大人達以上に備わっているはずです。ところが最近は、これがうまく機能していないのではないかと思えることを多々経験します。次回はこのことについて書きたいと思います。
(笠井)