泣く子は育つ (カーネル笠井)
Oct
22
妻「お父さんにお茶とお菓子を出すけれど、○○も一緒に食べる。」
息子「学校で給食を食べたから、食べないに決まってるじゃない。」
学校で何かあったのか、ずいぶんと反抗的な態度です。妻も少しカチンときたようですが、まだおさえています。
妻「じゃあ、お夕飯までがまんしてね。」
こんなときはこれで終わるはずがありません。しばらくすると、
息子「やっぱりぼくも食べるから、ぼくの分もすぐに出してよ。」
妻「さっきはいらないって言うから、しまっちゃったじゃない。」
息子「ぼくだってお腹がすいているから、食べるに決まっているじゃない!」
ついに妻はキレました。
妻「親に対してその言い方は何よ。あんたがいらないって言うからしまったのよ!」
息子「このままじゃ、お腹がすいて何もできないよ。」
妻「何もできないなら、自分の部屋でねていなさい。夕飯までは何も食べさせないから。もし言う事が聞けないのなら夕飯だって絶対に食べさせません。」
と言って、息子を部屋に押し込みました。すでに何人も子供を育てているせいか何の迷いもなく手慣れた様子です。息子にとっては“取りつく島もない”といった状況です。見ている私は、そんなにおこらないでできれは息子と一緒に楽しくお茶を飲みたいのになどとつい甘い考えを持ってしまうのですが、妻には非がないのでだまっています。耳をすませば、シクシクという泣き声がしばらく聞こえてきます。妻は何もなかったかのような平気な顔をしています。
---30分後---息子が部屋から出てきました。
息子「お母さん、やっぱりお腹がすいてがまんできないから、お手伝いをするから夕飯を少し早く作ってくれる。」
妻「それならいいわよ。じゃあシチューを作るから玉ねぎの皮むきを手伝ってくれる。」
息子「いいよ。何でもするから。」
息子の顔から笑顔がもれ、さっきとは別人のようです。
一人乗りヨットによる太平洋単独横断に成功し、『太平洋ひとりぼっち』の著者にもなった堀江謙一さんがこんなことを言っていました。「何週間も人と話ができないと、ストレスがたまってきてどうしようもなくなってくるんです。私はこんなときにはわざと大声を出して泣くまねをするんです。すると自然に涙も出てきて、そのうち本当に泣いているんです。そして、しばらく泣いた後は気分もすっきりし、ストレスもなくなっているんですよ。」
子供はストレスがたまると理由もなく大人にくってかかることがあります。前回の授業ではとても楽しく別れたはずの子が、今日の授業ではいきなり不機嫌なのです。しかもわがままや訳のわからないへ理屈もいいます。こんなとき、以前は授業を進めなくてはとの使命感で何とか興奮しないようになだめて授業を進めていたのですが、効果があるはずもありません。ですから最近ではこんなとき、かなりきつい言葉で相手の非を説明し、こちらの気持ちも話してあげ、逃げ道を与えません。すると、もうポタポタと涙を流しています。そして、ものの5分もすると顔色が変わっていて、ここがうまく理解できなかったんだなどと説明を始めてくれるのです。きっとストレスがたまっていて、どこかで泣きたかったのだと思います。
少子化のせいか、泣きたい子供が親に向かってわがままを言っても、何とか子供の気分をなだめるためにそのわがままを通してしまうことが多いのではないでしょうか。そんなときの子供は“泣きたい気分”だったはずです。ですから親にしかられて泣いた方がはるかに子供のストレスは解消するのですが。
『泣く子は育つ』というように、良く泣く子はとても素直に育ちます。わが子も、いつまでも母親に甘えているのは考えものですが、せめて思春期ころまでは泣き虫のままでいてくれれば、父親としてもとても楽なのになどと、つい甘い事を考えてしまいます。
(カーネル笠井)
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