もの言う牧師のエッセー 再投稿
第340話「 412日分の有給をプレゼント 」
今年3月、ドイツのフロンハウゼン村で起こった素敵な話が世界を駆け巡った。工場の組み立てラインで働くアンドレアスさんの息子で3歳のジュリウス君は、白血病と診断され化学療法のために9週間の入院が必要となった。
しかし、あろうことかこのタイミングで彼の奥さんが心臓発作で急死。失意のどん底に沈むアンドレアスさんではあったが、今やジュリウス君を看護できるのは彼しかおらず、早々と有給を消化したものの9週間には全く足りない。仕事をしなければ治療も生活も出来ず、かと言って病気の息子を放っておくことなど出来ない。「一体どうすれば。。。」 心が折れそうになるアンドレアスさん。
そんな時、会社の女性マネージャーのピアさんが救いの手を差し伸べようと立ち上がり、650人の社員に向かってこう呼びかけた。「皆が無償で働いてくれた残業分を寄付し、アンドレアスさんの有給に充てます。協力してください。」
何と650人全員が快諾。その中にはアンドレアスさんのことを知らない社員も多かったそうだが、わずか2週間で3264.5時間分、1日8時間勤務として約412日分の有給がアンドレアスさんにプレゼントされた。今年2月の暮れ、5歳となったジュリウス君は無事に治療を終え、健康状態も良好、幼稚園へ通うこともできそうだという。
聖書に
「キリストによって、からだ全体は、
一つ一つの部分がその力量にふさわしく働く力により、
また、備えられたあらゆる結び目によって、
しっかりと組み合わされ、結び合わされ、成長して、
愛のうちに建てられるのです。」
エペソ人への手紙4章16節、
とあるように、イエスは常々、自身の申し子である教会を一つの体にたとえ、そこに属する人々が互いに助け合い高め合う必要を説いている。「私は永遠に皆と会社に感謝します。」と喜ぶアンドレアスさんと、途方もなく大きい援助をした650人の社員たちを見て、本来あるべき教会の姿である「神の国」を垣間見た。 2018-6-15