ほとんどの手術は、手術前の状態より良くなるために行われます。
ですから、大きな希望があります。
対極的に、流産手術は悲しい手術です。
流産 (子宮内での赤ちゃんの死亡) を宣告され、
絶望と悲しみのまっただ中に行われる手術です。
10年以上も前のひとりの患者さんのことをよく思い出します。
非常に難治性の不育症患者さんでした。
10年間以上も私を信じて、
流産しても、流産しても、
私のいろいろな治療を受けてくださいました。
しかし、
10回以上も、流産手術を行うことになってしまいました。
あまりにも過酷で悲しくて、
無言のまま、流産宣告をし続け、
最後の数回は、ご本人の希望により、
流産手術を麻酔なしで行いました。
ご本人は、感情が凍りついており、
痛みさえ感じないようでした。
いや、
身体的な痛み以上に、
こころの痛みが極まっていたのかもしれません。
たぶん、自分の命より大切な命だったのではないでしょうか。
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