秋のコラム (秋元)
Oct
3
毎年受験生が気合いをこめる夏である。もちろん指導する方も、たっぷり時間のとれるこの季節こそこれまでの復習と実践へのステップにしようとそれこそたっぷりのボリュームで臨む。まさに気温の上昇とともに双方の熱気も湯気を立てる。しかし8月の後半を迎えると子ども達の気力・体力ともに限界がきて、成果も目には見えず親も疲労困憊し、秋風の訪れとともに焦燥感や空しさが心を支配し始めるのである。
しかし、私はいつもこの秋風を待っている。何か追いたてられるように事を進めているとき、冷静に自分自身を見つめることができる人間でなければ地に足はついていない。雰囲気にのせられて量はこなせても、それだけではほんとうに自分のものにはならない。往々にしてノートをとることが精一杯である。大人でも、いつでもどんな状況でも対処できる力は同じ経験をくり返し自然と身に付くか、常に自分で自分のしていることを全体のスケジュールの中で認識・確認し、スキルを応用する準備を意識的にしている場合である。子ども達が量に追われる夏に身に付けるのは算数で言えば集中力の持続と、そしてとりあえずもう一度全体を見渡し、算数の領域がある程度わかり、いくらか個々の領域の関連性がわかったという意識である。暑い最中、夕方なり夜なり帰宅した子ども達の意識はもうろうとしている。朝の授業開始時には疲れに表情も冴えない。
それが、一時の涼風を感じて身体も軽くなり、はじめて気持ちも落ち着き、本当に考えることを始める。知らずに増した集中力が強い味方になる。忘れていること、まだできないことも多いはず。しかし、言うなればここからが本番である。最近の受験生はスタートが遅く、したがって完成も遅い。まあ完成された状態で受験を迎えるなんて理想でなかなか難しい。しかしそれに向かって進むから進歩がある。そして向かうべき方向が秋から冬へと固まってきて、拡散していたエネルギーがひとつになって爆発するのである。
すでに模擬試験も始まっている。順調に滑り出すことは今申し上げたように難しい。模擬テストは勉強の軌道修正のための道しるべである。同じ模擬試験でも回数によって範囲はことなり、すべて受けて全範囲をカバーすることになっている。冷静に子ども達の今の状況を判断し、彼らのこれからを導いてあげるのが大人の役割である。
最後にスランプの抜け出し方をひとつ。難しいもので実力を取り戻そうとするのではなく、ひとつ難度をさげた基本を中心に全範囲を短時間のうちに一気に仕上げることです。難問は基本の複合体です。また、そのための復習教材を準備して持っていることも大切です。
(秋元)