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もの言う牧師のエッセー 再投稿

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第356話 西日本豪雨①「 助けに行かな 」
 
   西日本集中豪雨により大規模冠水し、48人が犠牲となった岡山県倉敷市真備町で、自衛隊員でも消防隊員でもない会社員、野村浩史さんは一人でも多く助けようと、力尽きるまでゴムボートを漕ぎ続け約20人の人々を救った。
 
豪雨が降り続いていた7月6日夜、自宅で両親と一緒にいたが、午後10時ごろ、真備町地区に避難勧告が発令されたことから、「車がやられたらどうにもならん」と先に高台の公園に避難し、車内でサッカー・ワールドカップの中継を見ていたが、3時間後、まだ自宅にいた母、裕美子さんから、「水が家の車のボンネットまできた、もうダメじゃ」。さらに2時間後には「肩まで水がきた」とラインでメッセージが届き、夜が明けるのを待って車に積んでいた釣り用のゴムボートに空気を入れ、午前8時に車で自宅近くの土手行ったところ、目にしたのは一変した街の光景だった。
 
「まさかこんなことに。。。」裕美子さんは一足先に市のボートに助けられていたが、周囲を見渡すと大勢の人が取り残されており、ベランダで胸まで水につかったおじいさん、屋根の上でタオルを振る知人、小さな子どもの姿も。「待っとって!またすぐ来る」と声をかけ、順番にボートに乗せ始めた。土手まで道のりを何度も往復しつつ動画をSNSに投稿し知人に応援を要請、目の高さにある電線をくぐり、クギが刺さったがれきを避けながら必死にオールを漕いだ。飲まず食わずで救助活動を4時間ほど続けた昼ごろ、手がしびれ始めた。脱水症状と疲労でろれつが回らなくなり、ついに倒れたが、「助けに行かな」と口にし続けた。彼は病院で目覚めた時、「生きとったんじゃな。」
 
「彼は、自分のいのちの激しい苦しみのあとを見て、満足する。」  
             イザヤ書53章11節。
 
“彼”はイエスを指し、これは今から2000年前に人類の罪を背負って十字架にかかったキリストの到来を預言した、今から約2700年前に書かれた聖書の一文である。一人でも多く「助けに行かな」と十字架を担ぎ、血を流し、苦闘の末に殺されたが、3日目によみがえった時、「生き返ったんじゃな」と言われたかも知れない。おかげで私たち多くが救われ、イエスご自身もそれを喜んでおられる。                           2018-9-30

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