ばーちゃんが亡くなった。 血縁は無いのだけどリンダの母親だから、ひいては、あっしのばーちゃん・・ という立ち位置になる。 アメリカでNASCARに参戦していた1998年からの付き合いだった、リンダ。 ろくに英語を話す事も出来ないあっしを、それでも優しく受け入れてくれて、いつしか何の承諾も無くあっしの事を日本の息子だから、と言っていた。 まんざらでもなかった。 そのリンダが急に亡くなって4年ほど経つだろうか。 シアトル近郊から約700kmクルマを走らせたカナダとの国境の街の、さらに外れの山中に彼女の家がある。 アメリカには素晴らしい景勝地が幾つもあるけど、あっしにとってはこの家が、この環境が何よりも好きな場所で、何よりも美しい土地。 静かで、平和で、山と牧場と、トレイルしかない。 その家とは近所の別棟に、リンダの母親も一人で暮らしていた。 まさにスープの冷めない距離! いつ会っても、物静かだけど色気のあるばーちゃんだった。 色んな事情もあって、リンダが亡くなってからはなかなか連絡もつきにくくなっていたから、あっしがココを訪れる時は、決まってアポなし電撃突撃。 いや、前もって連絡しておければ、と、いつも思うんだけど・・・ それでも、ばーちゃんもリンダの娘も笑顔で「よく来たね」と家に入れてくれる。 そして、あっしはいつも驚く。 ばーちゃん、いつもなんでそんなに綺麗(上品)な服着てるんだ・・? 誰かが訪ねてきても臨戦態勢の、上品な化粧に上品なブラウスとスカート、そしてストッキング。 お世辞にも、この山の中では必要なさそうな、反比例するファッション。 背筋もきちんと伸ばしながらも、ソファーに腰かけて、自然体。 それに、ばーちゃんの家はいつも綺麗な花が咲いていて(植物の事は良く分からんが、とにかく綺麗だと言うことだけは分かる)、小鳥を飼っていて、家の中も綺麗にしてある。 モノはいっぱい有るのに、乱雑じゃない。 いつも、だ。 この頃でもすでに95歳から96歳になっていた筈だが。 イメージ的には、1997年の映画「タイタニック」で出演する年老いたローズ役のグロリア・スチュアート。そっくりだった。 血縁のある亡くなったばーちゃん達や、日本でよく目にする高齢者と比較したら申し訳ないけど、とてもこのハイセンスは太刀打ちできそうにない。 もう、ね。金の有る無しじゃなくて、本当に生き様しか無いもの。 この5月辺りに感染症の心配もあって、メールで元気かどうか話した際は、ばーちゃんも娘も元気だとの返信が有ったばかりだった。 そのばーちゃんが、昨日亡くなった。 99歳だった。 来月には誕生日だから、めでたく100歳になれたのに。 100年も生きて来たんだな。 大恐慌も、世界大戦も、色んなことが有っただろうな。 寂しくて悲しいんだけど、娘は「She is in a better place now」と言う。 クリスチャンのヒトは必ず言うよね、敬愛するレーサー・見崎さんも「死んだら一番いいトコロへ行けるんだから」と言っていた。 あっしはほとんど無宗教に近いので、残念ながら、死んだら原子に還元するだけで、なんなら宇宙に還ると思ってるすよ。 でも、ばーちゃんが・・そしてリンダも、今より良いトコロに居るのなら、それはそれで良かったと思うっすよ。 格好良いばーちゃん、今までアリガトウ、すぐに飛んで行けないんだよ・・ リンダの時もそうだった。 何かあれば、すぐにでもあそこへ行きたいんだけど、無理なんだよ・・。 御免。 2人とも今頃、なにか楽しく話でも盛り上がってくれると嬉しいな。