「神奈川沖浪裏」(かながわおきなみうら)
行ってきました。北斎展。
葛飾北斎といえば富嶽三十六景が有名ですね。北斎は実際にそこを訪れたわけではなく、想像の世界で再構築した風景画がこの三十六景。売れ行き好調で実際には四十六景描かれています。現在会期中の北斎展に行って驚愕したのが彼が三十六景を描き始めたのが
なんと63歳!
北斎が亡くなったのが卒寿を迎えた90歳。その臨終の間際に言ったという言葉が
(北斎)翁は大きく息をして「天が私の命をあと10年伸ばしてくれたら」と言い、しばらくしてさらに言うことには「天が私の命をあと5年保ってくれたら、私は本当の絵描きになることができるだろう」と言ったそうです。そう言った彼ですが、今回の北斎展では、彼が1年間毎日描いた「獅子」の絵が全て展示してあったのも興味深いものでした。毎日描き続けたのもすごいですが、1月から12月までの作風を見比べるとやはり変わっていっています。
彼が描き始めた年齢と同じになる自分にとっては衝撃でした。生涯現役と思いつつも会社勤めだった周囲の同級生の多くは退職しはじめ将来の自分の姿に不安が横切り始めることもあった矢先だったので、それこそ「喝!」と言われたようでハッとした自分が居ました。
ところで藍はJapan Blueとも言われますが、彼の浮世絵にもあるBlueはベロ藍と言われ実は当時にドイツで作られた青顔料が輸入されたものと知ったのも衝撃でした。文化発展の背景にはこうした技術貢献度も大きいのは間違いないですね。昨今のデジタル社会への変革もその一面だと思います。
浮世絵は北斎はじめ歌麿など当時のヨーロッパの美術世界にも大きな影響を与え、ジャポニズムという19世紀後半に日本趣味の流行を起こしました。
展示会で初めて知ったアンリ・リヴィエールが描いた「エッフェル塔三十六景」。ゴッホも浮世絵を模写したりして影響を強く受けたひとりですが、それまで暗い画風だった彼の絵が一挙に明るい画風・作風に変わり、有名なひまわりは浮世絵の影響が大きいと言われているそうです。
鉄道、車、飛行機からインターネットのなかった200年近く前の当時に垣間見る文化交流と影響。ネット社会の昨今だとこうした影響変化はもっとグローバルにもっとダイナミックに起きてもおかしくないだろうなと思う一方、大事なのはそれを受け止める「感性」と自分のものに昇華できる「自己」を持っていないと単なるコピーでは新しい文化は起こりませんね。
伝統とは守るだけでなく、新しいものも取り入れて昇華することの連続で継承されるのだろうと色々と想像が広がる北斎展でした。GW中で刺激あるひと時でした。
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