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posted 2022-05-04 19:34
猫の揺りかご Blog
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hotaru
「『盗賊も改心するほどの美味しさ!』ってのはどう?」 開発したばかりの新商品を試食しながら、彼が得意げに声を上げる。 「う~ん。パンチを狙いすぎてる割には、パンチが足りない……」 私は蓮華ですくったスープを啜りながら、ダメ出しをする。 「じゃあ、『美味しさの圧縮袋、ここに見参!!』とかは!?」 「…...
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posted 2022-05-04 19:09
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hotaru
「蓮華畑に寝転んでいたらね、盗賊の彼が迎えに来てくれたの!!」 「まるで少女漫画のエッセンスが圧縮、いや、凝縮されたような夢だね」 昨夜見たという夢の内容を嬉々として語る彼女の横で、私は苦笑交じりにコーヒーを淹れる。 夢よ覚めろとばかりに殊の外ブラックにしてやろうか。 それともここは、己の幻想がいか...
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posted 2022-05-04 18:49
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hotaru
ゴミのように積まれたファイルの山に埋もれながら、 カレーライスを頬張る。 目の前にあるのは新品のパソコンとキーボード。 味気の無いレトルトカレーを咀嚼しながら キーボードを触れば、 メカニカル特有の心地よい打鍵音が虚しく響く。 「こんなことのために買ったんじゃないだけどな……」 趣味の小説を思いっき...
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posted 2022-05-04 04:35
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「サラマンダーって伝説上の生き物なんでしょ」 君がマウスをカチカチ言わせながら呟く。 「うん。でも、本当にいるとしたらおもしろくない?」 そう?と首を傾げる君に僕は笑う。 「例えばこのかすみ草だって、熱帯地方の 人々からしてみれば、伝説上の植物かもしれない。 そうやって考えてみれば、この地球上のどこ...
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posted 2022-05-04 03:40
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「ねえ、私が死んだら、泣いてくれる?」 君はかすみ草のように儚げに笑う。 ねえ、なんでそんなことを言うの? なんでそんな遠い目で笑うの? 僕はここにいるのに。 君の瞳は闇に閉ざされたままで、僕を映してはいない。 「そうなる前に、必ず見つけ出すから……」 サラマンダーのように地中を這って、 ネズミのよ...
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posted 2022-05-04 02:59
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私が送ったメーデーに、 あなたは気づいてくれるだろうか。 わずかばかりの期待はまるで、 今にも割れそうな薄氷(うすらひ)のようで。 すがりつくこともできずに、 私は絶望の淵に沈んでいく。 AIを駆使した科学技術が発展する 世の中だというのに、 人間(ひと)が他人(ヒト)の心を 理解するのは難しくて、...
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posted 2022-02-20 05:30
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雪道に所狭しと露店が並び、 そのあちこちで、色とりどりのネオンのようにきらびやかな飴が売られている。 真っ赤なコートに身を包み、買ったばかりの飴を頬張りながら、千鶴は笑う。 「これでもう、今年は風邪を引かないね」 この地域に昔から伝わる言い伝え。 旧正月の今日、祭りで買った飴を舐めると、その年一年、...
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posted 2022-02-19 19:23
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希望を失い、反旗を翻した堕天使は、 幸せの象徴である カエルのペンダントだけは手放せず、 まるで鎖のように自分の腕に巻きつける。 (ここは、とても暗くて寒いから……) 温もりも光も届かない。 だけど希望だけは失いたくないのだと、 祈りにも似た矛盾を胸に空を仰ぐ。 (このままでは終わらせない……) こ...
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posted 2022-02-19 05:01
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金木犀の匂いが漂う庭で、 炭酸水を口に含む。 不安定な秋の空は、 心の中を映しているかのようで。 オレンジ色の花が風に揺れる度に 千紘の心はざわめく。 「いつまで続くのかな」 この不条理で混沌とした日常は。 (早く、帰りたい……) そんな想いを、 しゅわしゅわとした泡とともに一気に飲み干す。 空...
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posted 2020-09-11 06:21
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月には兎が棲んでいる。果たしてその兎は幸せなのだろうか。 晴れ渡った夜空に浮かぶ月を眺めながら、そんな哲学めいた考えが浮かぶ。 初秋のベランダではコオロギの鳴く声が聞こえ、 気持ちの良い風が頬を撫ぜていく。 誰の人生にも必ず有効期限があって、それをどう使うかはその人次第なのだが、 誰にでも平等に与え...