気動車の発展と開発 一般用気動車と通勤用気動車 第9話
Dec
29
液体式気動車の系譜
戦後の液体式気動車(昭和35年頃までは液圧式)は、キハ44500(称号改正後はキハ15)からスタートしました。
液体式気動車の歴史を簡単に振り返ってみますと、上記のキハ44500試作車を経て、昭和29年から量産型と言える、キハ45000(後のキハ17)が製造され、派生して2エンジン車仕様のキハ44600(後のキハ50試作車を経て)キハ44700(後のキハ51)が誕生、その後、準急用としてキハ44800(後のキハ55)が誕生します。
キハ55が誕生して、初めて、優等列車用気動車が誕生し、キハ17は、一般気動車という分類になりました。
一般型気動車の誕生
その後昭和32年にキハ55の成果を活かして、キハ17のボディサイズを一般客車並みに拡張したキハ25(両運転台はキハ20、北海道仕様はキハ20の北海道仕様で、窓は二重になったものの、後に量産されるキハ22のようにデッキがなく極めて不評でした)形が量産されることになりました。
初期のキハ20系列は、キハ55の初期型と同様、窓上部がHゴムの明かり取り窓としたタイプでしたが、翌昭和33年(1958)の増備車からは、2段上昇式窓に変更されました。
なお、初期のキハ20は、キハ17と同じエンジン・並びに台車でした、なおキハ20の初期車もその後台車をDT22A・TR51(国鉄形気動車の標準台車)に交換されています。
また、蛍光灯がまだ発展途上の時期であり、本格的な蛍光灯を採用したのは、昭和38年増備車からであり、それまではキハ17と同様の白熱灯でしたが、その後サークライン式の蛍光灯に変更されています。
キハ20形は昭和41年まで製造されることになり、国鉄における標準型の普通気動車列車として最近まで活躍したのはご存じの通りです。その後はキハ45→キハ47と変遷していきました。
なお、直噴エンジンを搭載したキハ37(DMF13)系エンジンへと続きますが、昭和40年代以降の気動車発展史を語らせていただきます。
通勤形気動車の誕生の背景
なお、今回は一般気動車の中では異色のキハ35・36形気動車に焦点をあててみたいと思います。
キハ35系気動車は、関西線は東海道本線比べて近代化が遅れていた関西線に、昭和36年から投入された車両です。
関西線は、関西鉄道を前身とする鉄道で東海道線のバイパス線と比して大幅に近代化が遅れていました
その理由の一つには、並行する近鉄の存在も大きかったと思われます、結果的に国鉄としても東海道線並びに新幹線の建設で、関西線まで中々予算を回せなかった事情もあったかと思います。
昭和32年には、準急「かすが」がキハ51で運転されるなど、一部気動車化されたとはいえ、その殆どの列車は蒸気機関車牽引による客車列車として残っていました。
昭和34年の監査委員会では、関西線の近代化が遅れていることが指摘され、それを受けて「湊町~奈良間」の線増と気動車化による抜本的な改善を図ることとなり、新たな通勤用気動車が開発されることになりました。
参考:
関西本線にキハ35形が導入される契機となった、国鉄監査報告書(昭和34年)
キハ35形の特徴
この車両は、気動車初の通勤形として位置づけられ車内はロングシートが設けられていましたが、電車と異なり3ドアでステップ付きという車両と相成りました。
特に車体中央部はエンジンが搭載されており、ステップを戸袋窓付きで作ると車体強度上問題があるため、ドアは外吊り式とされましたが、プラグドアのように閉ドア時に車体とドアが密着すればよい良いのですが、そのような構造ではなく簡易な構造であったため、戸袋を設けることで強度が不足することは避けられた反面、隙間風対策は十分とはいえない車両となりました。
また、車体の外側をドアがスライドするため、ドアすぐ隣の窓は下段が特にほとんど開かないようになっており、腕などをだして、ドアに挟まれる事故が起こらないように配慮されていました。
車内は、3ドアロングシートですが、運転台の反対側車端にはトイレが設けられ【キハ36はトイレなし)、トイレ横のシートは枕木方向に設けられていました。
これはトイレを開けたときに、乗客と直接目が合わないようにする配慮からでした。
また、電車は通勤形電車は禁煙でしたが、気動車の場合さほど混雑もしないと言うこともあって、出入り口付近の柱に灰皿が設けられており、車内で喫煙可能でした。
さらに、キハ20形一般気動車と異なり、キハ35はキハ80系やキハ28・58と同じ横型エンジンを積んでいたことも特色でした。
なお、キハ35が配置されたことで、港町~奈良間は頻発運転が行われることとなりましたが、それでも近鉄が優位であることに変わりはなく、関西線の湊町から奈良間の電化は昭和48(1973)年まで待たねばなりませんでした。
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