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生産性運動と国労 生産性運動中止へ マスコミと連携した国労の反撃 第四話

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生産性運動に関しては、労使双方... 生産性運動に関しては、労使双方の話し合いが重要では無いのかというのが新聞の一般的な論調でした。画像は、国鉄部内紙 国鉄線1971年11月号から、世論アラカルトから引用
長らく開けてしまいましたが、久々に更新させていただきます。
何故か、アップするときに消えてしまうようで、下書きを残していませんでしたので再度一から書き直しとなりました。
 
国労はサンケイ新聞以外には、積極的に情報を提供
 
さて、国労は潤沢な運動資金もあることから本格的な反撃に出ることとなり、当時の金額で1億円を投じてマスコミ対策を行うこととなりました。〔前述〕
特に、国労は情報を敢えて小出しにすることで、ほぼどこかの新聞が記事にしてくれるようになることを狙ったもので、鉄労編纂の「国鉄民主化への道では下記のように述べられています。
面白いのは、毎日新聞・朝日新聞・讀賣新聞には小まめに情報を提供する反面、サンケイ新聞には殆ど情報を流さず、当時のサンケイ新聞の記者は他社にやられっぱなしだったと述壊していますが、むしろそれは誇るベキコトだったのでは無いかと主張しています。
国労のある幹部は、「記者のたまりへ行って、少しずつ話題を提供した。一度に大きく出るより、毎日でたほうが効果がある」と話していた。全体を書かず、一部だけ書いて、世論をリードする。「書かざるウソ」でもあった。<br>
生産性運動支援の「サンケイ新聞」経済部デスク〔当時〕の吉井匡明が、「マル生の時には、うちは抜かれっぱなしで弱った」と話していたが、国労は「サンケイ新聞」には趣向を凝らした記事〔全体から見たらウソになる記事〕を提供しなかったのだろう。「抜かれっぱなし」は当然で、むしろ名誉と言うべきだ。
これはあくまでも個人的な感想ですが、購読者も多い新聞を巻き込む方がより世論に訴えられると考えた、国労の戦略と言えるかもしれません
 
マスコミによる生産性運動批判の記事は9月から
 
国労の記事が最初にアップされたのは1971年9月16日に北海道苗穂工場での不当労働行為が有ったという記事からであったと。国鉄民主化への道では書かれています。
そして、その後も連日のようにこうした記事がアップされたと書かれています。
そこで、国鉄部内紙の「国鉄線」という冊子を参照しますと、各新聞が社説で国労の情報をベースとした論調で、国鉄当局を批判していると思える記事を掲載していましたので、以下に新聞社毎にアップしてみたいと思います。
 
各新聞社は社説で生産性運動を批判
 
9月24日 東京新聞 社説
火の車の経営に苦悩する国鉄当局が、その改善のための一方法として生産性を向上させようとする事情は理解にかたくない。しかし、問題はその進め方である。国労、動労を闘争至上主義として敵視し、一方、鉄労を協力的として保護するような印象を与えるならば、国労、動労の反発を招き、生産性向上の目的はとうてい達成できまい。国労、動労を過激にさせた根因には、公企体労働者の労働基本格が制限されていること、その制限に当局側が寄りかかって安易で一方的な労務政策を進めてきたことに対する不満の累積があることは否定出来ない・・・・</blockquote>
国鉄当局が国労・動労を闘争至上主義として敵視しているとして批判
 
9月29日 毎日新聞 社説
生産性運動の基本的な考え方は、ILOのフィラデルフィア宣言から出発し、人間性尊重の労使関係を柱としたものだが、国鉄当局がこの運動に取組んだのは赤字財政の再建対策が直接のきっかけであった。・・・国鉄の現状は生産性運動本来の趣旨から大きく逸脱した方向に進んでいると思う・・・マル生運動が労使関係をゆがめているのは、実権をもつものによっての"強権政治"的発想、それに管理者の家庭訪問が示すような労務政策の前近代性が根底に流れているからである・・・こうした発想を捨て、いかに労使関係の相互信頼を回復するかという観点から、この運動を出直すべきであろうがあることは否定出来ない・・・・
 
国鉄の生産性運動は最初のスタートが赤字対策ありきからスタートしている点に関して指摘しており、これ自体はある意味では正論と言える部分でもありますが、強権的発想というのは些か言いすぎではないかと、個人的には感じています。
 
10月1日 讀賣新聞 社説
生産性向上運動は、民間企業の場合、組合員の企業意識と結びついて比較的スムーズに受け入れられた。これを国鉄のような独占の公営企業にストレートに持ち込んだところに、そもそもの問題があったのではないか。官僚的な労務政策で押し切ろうという当局と、イデオロギー的に反対する組合の問には対話さえも失われてしまったかのようだ。
人間性尊重の労使関係を目ざす生産性向上運動が、死を招く運動になっては救いよう、がない。労使とも頭を冷して、事態解決のテーブルについてもらいたい・・・・
 
讀賣新聞は論調的には、双方の冷静な判断を求めるという意味では比較的中立な見解と言えます。

同日朝日新聞も社説として生産性運動に関して言及しています。
 
10月1日 朝日新聞 社説
気にかかることの一つは、生産性運動が「良識者」を育成する運動にすりかえられていることである。元来、所属する労働組合を基準にして「いい職員」「悪い職員」と色分けするやり方は本質的に誤りだと思う。重要なことは全員が誇りある再建にかかわっているという共通の認識を生み出すことではないか・・・・国労も硬直的な姿勢を変えてほしい。険悪な国鉄の労使関係も、原因の大半は双方が全く意思疎迎を欠いていることによる。ストの時だけではなく恒常的な労使協議のルールをこの機会にぜひ確立することを望む
ということで、どちらかというと国労の言い分元に発言しているようにも感じられますが、
国鉄当局も国鉄線という雑誌で総括していますが。世論としては、国鉄当局も組合側も双方がもう少し歩み寄って行くこと、更には当局の姿勢は強権的なところが見受けられると言うことで多少組合寄りの見解という記事が書かれているように感じてしまいます。
当時は、現在のようなインターネットなどは無いわけですから新聞社やテレビなどのマスコミの記述は世論を形成していくこととなるわけで、そうした意味では国労の戦略は成功したと言えるかもしれません。
実際に、その後も当局側の不当労働行為が報道され、生産性運動自体が中止に追いやられていくのはご存じのとおりです。
 
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