桜 物 語
桜 の 章
序章
私の名は、榊原祐里。三歳の時に父母を山崩れで亡くし、桜河のお屋敷にお世話になった。母が私を産むまでの数年間、お屋敷の手伝いに通っていたことがあり、旦那さまが孤児(みなしご)の私を引き取ってくださった。
祐里の『祐』は、光祐さまの『祐』。父母がお屋敷のご長男・光祐さまに肖って、私に祐里と名付けたと、後に婆やの紫乃さんから聞いた。
お屋敷での私の仕事は、光祐さまの遊びのお相手だった。
中学生になられた光祐さまは、都の学校へと進学された。
「光祐さまが都にお出でになられましたら、祐里のお仕事がなくなってしまいます。祐里は、お屋敷を出て行かなければなりませんの」
光祐さまが都に発たれる前日、私は、恐る恐る光祐さまに問うた。
「ぼくは、しっかり勉強をして立派な男になって、祐里のもとに帰って来る。祐里は、ぼくのお嫁さんになるのだよ。それまでの祐里の仕事は、父上さまと母上さまに甘えて、お二人を淋しがらせないことだ。頼んだよ、祐里」
光祐さまは、私の手を握っておっしゃった。
4年前の梅雨にたった一人の弟が突然逝きました。今まで二人姉弟だったのに、突然ひとりっ子になってしまいました。
通夜・葬儀の日、泣かなかったわたしに息子たちは「冷たい母」だと今でも言います。
悲しみは、涙だけでは、表現できない時もあるのです。
その翌年の秋から、20年ぶりに文章を書きたくなって、一気に書いて2年がかりで加筆訂正しました。
わたしは、もう千回くらい読みました。
ひとり言のようにここに記していきます。
◇◇◇桜物語◇◇◇
・・・はじめに・・・
日本人は、桜の花を愛します。
私も桜の花が大好きです。
生家に桜の樹がありました。
毎年、私の誕生日を祝ってくれるかのように
満開の花を咲かせてくれました。
その桜の樹は成人して数年後の台風で
折れてしまいました。
今は、もう、ありません。
ほのかな薄紅色の花と黄緑色の葉を同時に
楽しませてくれる桜でした。
母がその葉で桜葉餅を作ってくれました。
いまでも私のこころの中の桜は満開です。
その想いをこの『桜物語』に籠めました。
生きていくにはいろいろなことが起こるので
ひとを思いやり信じるこころや
自然の神々の力を呼び覚まし
桜の花を愛でた時のような気分に浸れるよう
ただただ
しあわせな物語を書きたかったのです。
是非、素晴らしい桜の風情と究極の愛を
あなたのこころに感じてください。
◇◇◇桜物語・目次◇◇◇
◆ 桜 の 章 ◆
・序章
・桜の樹
・大蛇
・花蕾
・守り人
・秋桜
・紅葉
・遺言
・陽光
◆ 柾 彦 の 恋 ◆
・追憶
・杏子〈きょうこ〉
・恋慕
・美月〈みづき〉
・祐雫〈ゆうな〉
・萌 〈もえ〉
・笙子〈しょうこ〉
・紫乃〈しの〉
・笙子〈しょうこ〉
・告白
・桜の姫
◆ 追 章 神 の 森 ◆
・宿命
・神の森
・誘惑
・出生
・蜘蛛の糸
・静謐
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