2001年度 5月 - カリフォルニアの電力事業
サウス・ベイ経営セミナー、2001年5月度(5月9日、ホリデーイン・トーレンスで)
講師=ジェトロ・ロサンゼルス事務所の副所長、福島章さん
福島さんの略歴 1980年通産省に入る。東京大学原子力工学大学院を卒業した。
98年6月にロサンゼルスに赴任した。2001年6月に帰国する直前であるにもかかわらず、経営セミナーの講師を引き受けてもらいました。ロサンゼルスに来る前は、建設省の大臣官房で、安全問題を担当した。
講演内容
通産省では、電力エネルギー政策を担当し、電力予測の室長をしていたことで、カリフォルニアの電力事業の緩和に注目していた。電力の自由化は、世界各地で起こっており、1990年ころからイギリス、アメリカ東部で自由化が行われ、成功している。つまり、自由競争による電気料金の値下げが実現している。
カリフォルニア州では、1996年に電力販売に競争原理を持ち込む法律が成立して、1998年4月から実施された。福島さんがロサンゼルスに赴任したのは、1998年6月で、2000年ころには、新しいシステムの結果が出てくると思っていたら、急激な電気料金の値上げ、輪番停電が起こり始めた。
カリフォルニア州の新システムは、従来の電力会社が、発電設備を売却して、配電専門の会社になり、配電会社は、自由に安く供給してくれる発電会社から電気を買えることを目的にしたものだった。
ところが、配電会社は入札で、電力を購入しなければ、ならなくなったため、長期契約による安い料金を確保できなくなった。卸値が上がってきたにもかかわらず、消費者への小売価格は、値上げできない規制措置があった。配電会社は、電力を売れば売るほど赤字になる構造に陥り、州外からの新規の配電会社の参入はなく、自由競争が起こらなかった。
2000年6月には、サンディエゴで、急激な電気料金の値上げが起こり、サンノゼでは、輪番停電が始まったが、カリフォルニア州のデービス知事は有効な対策を取らなかった。デービス知事が行ったことは、クリスマスの時、州議事堂前のツリーの電球に火をつけて、すぐに消して、節約を呼びかけたことだけ。
カリフォルニア州では、4550万キロ・ワットの発電能力があるが、2000年には5155万キロ・ワットの需要があった。輪番停電は、需要が3000万キロ・ワットの時点でも起こっている。4550万キロ・ワットの発電設備があるのに、発電所を稼動させていないことが原因。
一方、規制緩和の対象外になった、ロサンゼルス市の電気水道局は、従来どうりの営業を続け、安く仕入れた電力を州外の配電会社に売却することで、2000年は2億ドルの利益を出す、というおかしな現象も起きている。
カリフォルニア州の電力危機は、あと2年ほどで解決するだろう。あらたな発電所の建設が必要だが、環境保護運動は、ヒステリックになっている。発電所を作るというと以前は, Not in My Backyardと言っていたが、現在は、BuildAbsolutely Nothing Anywhere Near Anyone (BANANA)と言って反対している。
(要約=東 繁春)(了)
2001年5月14日
福 島 章 様
先日は 私ども「サウスベイ経営セミナー」のため、講師としてお出でいただき誠に有り難うございました。
「カリフォルニアの電力問題」と題してのお話しは、極めて身近でありながら、難解なこのトピックスを考える上で、大変参考になりました。
常に有るのが当たり前で、電力が有限である事すら忘れていた私達にとって、輪番停電という事態が、この文明国アメリカで起こるなど想像し得ない事でした。
この問題を、需要供給のバランスと、制度的問題に起因するものとして解説頂いた事は、私達の理解を深める上で大変有効でした。
私達が毎日消費している電力が元々自然界に存在するものではない事は、私達にも容易に理解出来ますが、これを安定的に供給するための裏方の努力はつい忘れがちです。 また、水力/風力/火力/原子力等どの方法をとるにしても、環境問題との関連を無視するわけにはいきません。
これらシステムを自由競争の中で有効に機能させるため、行政の役割の重要性を再認識致しました。また日本では、このような事が起こらない様努力されているという福島さんの言葉を力強く感じました。
終わりに、日本に帰国されてからも益々のご健勝ご活躍を祈念致しまして御礼の言葉とさせていただきます。
有り難うございました。
講師=ジェトロ・ロサンゼルス事務所の副所長、福島章さん
福島さんの略歴 1980年通産省に入る。東京大学原子力工学大学院を卒業した。
98年6月にロサンゼルスに赴任した。2001年6月に帰国する直前であるにもかかわらず、経営セミナーの講師を引き受けてもらいました。ロサンゼルスに来る前は、建設省の大臣官房で、安全問題を担当した。
講演内容
通産省では、電力エネルギー政策を担当し、電力予測の室長をしていたことで、カリフォルニアの電力事業の緩和に注目していた。電力の自由化は、世界各地で起こっており、1990年ころからイギリス、アメリカ東部で自由化が行われ、成功している。つまり、自由競争による電気料金の値下げが実現している。
カリフォルニア州では、1996年に電力販売に競争原理を持ち込む法律が成立して、1998年4月から実施された。福島さんがロサンゼルスに赴任したのは、1998年6月で、2000年ころには、新しいシステムの結果が出てくると思っていたら、急激な電気料金の値上げ、輪番停電が起こり始めた。
カリフォルニア州の新システムは、従来の電力会社が、発電設備を売却して、配電専門の会社になり、配電会社は、自由に安く供給してくれる発電会社から電気を買えることを目的にしたものだった。
ところが、配電会社は入札で、電力を購入しなければ、ならなくなったため、長期契約による安い料金を確保できなくなった。卸値が上がってきたにもかかわらず、消費者への小売価格は、値上げできない規制措置があった。配電会社は、電力を売れば売るほど赤字になる構造に陥り、州外からの新規の配電会社の参入はなく、自由競争が起こらなかった。
2000年6月には、サンディエゴで、急激な電気料金の値上げが起こり、サンノゼでは、輪番停電が始まったが、カリフォルニア州のデービス知事は有効な対策を取らなかった。デービス知事が行ったことは、クリスマスの時、州議事堂前のツリーの電球に火をつけて、すぐに消して、節約を呼びかけたことだけ。
カリフォルニア州では、4550万キロ・ワットの発電能力があるが、2000年には5155万キロ・ワットの需要があった。輪番停電は、需要が3000万キロ・ワットの時点でも起こっている。4550万キロ・ワットの発電設備があるのに、発電所を稼動させていないことが原因。
一方、規制緩和の対象外になった、ロサンゼルス市の電気水道局は、従来どうりの営業を続け、安く仕入れた電力を州外の配電会社に売却することで、2000年は2億ドルの利益を出す、というおかしな現象も起きている。
カリフォルニア州の電力危機は、あと2年ほどで解決するだろう。あらたな発電所の建設が必要だが、環境保護運動は、ヒステリックになっている。発電所を作るというと以前は, Not in My Backyardと言っていたが、現在は、BuildAbsolutely Nothing Anywhere Near Anyone (BANANA)と言って反対している。
(要約=東 繁春)(了)
2001年5月14日
福 島 章 様
先日は 私ども「サウスベイ経営セミナー」のため、講師としてお出でいただき誠に有り難うございました。
「カリフォルニアの電力問題」と題してのお話しは、極めて身近でありながら、難解なこのトピックスを考える上で、大変参考になりました。
常に有るのが当たり前で、電力が有限である事すら忘れていた私達にとって、輪番停電という事態が、この文明国アメリカで起こるなど想像し得ない事でした。
この問題を、需要供給のバランスと、制度的問題に起因するものとして解説頂いた事は、私達の理解を深める上で大変有効でした。
私達が毎日消費している電力が元々自然界に存在するものではない事は、私達にも容易に理解出来ますが、これを安定的に供給するための裏方の努力はつい忘れがちです。 また、水力/風力/火力/原子力等どの方法をとるにしても、環境問題との関連を無視するわけにはいきません。
これらシステムを自由競争の中で有効に機能させるため、行政の役割の重要性を再認識致しました。また日本では、このような事が起こらない様努力されているという福島さんの言葉を力強く感じました。
終わりに、日本に帰国されてからも益々のご健勝ご活躍を祈念致しまして御礼の言葉とさせていただきます。
有り難うございました。