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サウスベイ マネジメント セミナー( Southbay management seminar )は月一回のセミナーを中心に勉強し、時々に親睦をする、乃ち「よく学び、よく交友する」そのような会です。

2012年度 9月 - Appleとスティーブ・ジョブズ

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日時: 2012年9月12日(水)、6:30PM - 8:30PM
会場: ニューガーディナ・ホテル
講師:武藤秀毅(むとう ひでき)氏
講演録担当:藤原 勝





講師略歴:
Apple/Macのエキスパートとして、パーツ・アクセサリを販売する Vintage Computer社 CEO。毎日コミュニケーションズ社 Mac Fan誌へテクニカルライターとしての記事執筆多数。
Macworld、アップルスペシャルイベントの現地取材経験多数。
1986年 九州大学 電気工学科卒
1986年  トヨタ自動車(株)入社 エンジン開発、車両評価、CAMRYの開発に携わる
1997年 TOYOTA TECHNICAL CENTER, LA OFFICE に赴任
1999年 トヨタ自動車(株)退社
1999年 Vintage Computer 社設立CEO

講演内容:

A. はじめに:
5年ほど前からアップルに関するニュースが良く取り上げられる事が増えました。アップルと言えばステーブ ジョブスですが、本日の講演では彼の歴史や歩み振り返り現在のアップルがいかに育まれて来たのかをお話しさせて頂きます。

B. iPhone5 本日発表:
今日,iPhone5の発表がApple社からありました。今日の講演はiPhoneに関する事ではないのですが、少し触れてみます。
4 inch Retina Display
以前は3.5inch
20% Lighter, 18% Thinner
世界で最も薄いスマートフォン
2x faster A6 Processor
従来のものよりも2倍速いA6プロセッサーを搭載
LTE, Wi-Fi 2.4GHZ/5GHZ
外でのインタネーットのスピードがLTEで速くなり、Wi-Fi が2.4GHZ/5GHZとなるので、家での使用も今までより速くなる。
$199~ 9/14予約受付、9/21発売
Appleの株価が発表会の後でも上昇している事から判断して、商品は期待通りあるいはそれ以上のものであったとの評価の表れ。

C. Apple Inc.:
今日の演題であるApple社とはどのような会社であるかについてお話を始めます。
時価総額世界一の企業
2011年8月に世界一の企業になった。
カリスマ創業者スティーブ・ジョブス
iPhone,iPad, iPod, Mac, iTunes Store
H/Wと、音楽などソフト分野の製品にも手を広げている
デザインとUIが優れた製品群
デザインが優れ、UI(ユーザーインターフェース)も優れているので、使いやすく、使用マニュアルがなくても、触っていれば自然に使い方が分かってしまうほどです。
Innovationで市場開発
iPoneの前にはiPhoneのような製品は無かった。MACの登場でコンピュータの世界は一変したと言われている
垂直統合のビジネスモデル
市場調査を行わない、なんでも自社で行う、ハード、OS, ソフト、音楽や電子ブックの販売、直営の販売店を持っている

D. Apple社、過去30年間の歩み:
1984年、MAC発売
1985年、スティーブ ジョブス氏Appleから追放(辞任)
1995~7年、Apple倒産の危機
1997年、経営危機の最中にジョブス氏帰任
1998年、iMac発売、大ヒット、経営危機脱出
2001年、iPod発売
2004年、ジョブス氏膵臓手術
2007年、iPhone発売
2009年、ジョブス氏肝臓移植
2010年、iPad発売
2010年、4月、MS社の売り上げを抜く
2011年、4月、MS社の利益を抜く
2011年、8月、時価総額世界一
2011年、8月、ジョブス氏CEO辞任
2011年、10月、ジョブス氏死去
2012年、8月、時価総額歴代世界一

E. Steve Jpbs, 1955-2011, Apple Co-founder:
SFの一般家庭に養子
生まれて間もなく労働者階級の家庭に養子として引き取られている。その後シリコンバレーに引越して育った。このシリコンバレーの環境がその後の彼に大きく影響したと考える。
ヒッピー、リード大学中退、インドでの放浪、禅の修業
ヒッピー文化に影響を受け、大学は僅か半年で中退し、インドへ放浪の旅に出る。その後北カルフォルニアで禅の修業をしている。
完璧主義、ビジョナリー
高い目標を掲げ細部にまでこだわる完璧主義。その結果、完成度の高い製品が出来上がった。そして、先を見通すビジョナリーに長けていて、製品のアイデアや方向性を示す力が優れていた。
プレゼンの神様、現実歪曲空間
ジョブス氏のプレゼンテーションは現実歪曲空間と表現され、彼が製品をを紹介するといかなる製品もすばらしい製品に思えてしまうと言われるほどでプレゼンの神様と評価された。また、その手法は社員の新製品開発への説得にもその威力を発揮し、不可能を可能にしてきたと言われている。
2004年以来、癌闘病の中、経営

F. Steve Wozniak, Co-founder:
`ジョブス氏ほどではないがコンピュータ業界では有名人。彼はAppleの初期製品であるApple1、Apple2をほぼ独自で開発した事で天才的なエンジニアー。彼がいなければ現在のAppleはなかったとされている。

G. Starting from Garage Company:
ジョブス氏自宅のガレージでAppleはスタートした。創業者は3名いた。その内の一人はRonald Wayne氏で当時既に40代で、主に経理の担当をしていて、Appleの初期のロゴ(リンゴのマークではない)を作成したのも彼であった。しかし、ジョブス氏など他の二人の若者の経営方針についていけず、持ち株であった10%の株を当時の$800で売り戻し、創業間もなく退社している。現在その株の価値は5~6兆円とされ、彼の決断は世紀のミスジャッジと言われている。彼はその後コインやスタンプの収集販売会社を経営し現在も健在である。

H. 1976 Apple 1, $666.66:
世界最初のパソコンと言われるApple 1が200台製造され$666.66で発売された。 現在はスミソニアン博物館にも展示されており、オークションで$5万以上の評価価値があると言われている。その後、富豪で投資家のマイク マークラ氏の目に留まり、Appleへの投資の決断をする。それによってAppleの次の製品の大々的な開発が進められた。

I. 1977 Apple II, $1298:
Steve WozniakがApple 1を独力で大幅に改良したApple IIを発表。Apple 1は基盤だけの製品でキーボードは無かったが、Apple IIはキーボードもありケースに入ったコンピュータでTVに接続して使用できる(カラーで)画期的な製品だった。しかも大量生産で全米に爆発的に販売された。

J. 2nd CEO John Sculley:
Appleの経営規模が大きくなるに従い、専門的な経営手腕を必要とし,ペプシCEOのJohn Sculley氏を新たなCEOとして迎え入れる。当初、Appleへの移籍に消極的だったSculley氏に対しジョブス氏はDo you want to sell sugar water for the rest of your life, or do you want to change the world?とのセリフで説得した事は有名。

K. 1983 Lisa, 1984 Macintosh:
1983年に新機種Lisaを、1984年にMacintoshを発売。当時のコンピュータの操作には専門的な知識が必要であったが、Lisaは現在のPCとほぼ変わらない使い易さの製品であった。しかし、販売価格が$9996と高価であったため、商業的には失敗製品であった。当初Lisaの開発にはジョブス氏も参画していたが、途中で外された。その後、Lisaの対抗製品としてジョブス氏が開発したのが、Lisaよりも小型で小売価格が$2500と比較的安価なMacintoshであった。しかし、Sculley氏とジョブス氏での2頭体制での経営はやり難く、ジョブス氏はApple社を追放されてしまった。

L. 3rd CEO, Mike Spindler:
Appleは新しいCEO, Mike Spindler氏の方針の下、初心者からプロ向けまでの多機種のコンピュータ製品と低価格路線を打ち出した。その結果、マーケットシェアーは拡大するも、利益は上がらず大赤字となった。この間、マーケティングに重点を置き過ぎ、製品開発がおろそかになっていた事も災いし、Appleは経営危機に陥る。その責任を負わされたMike Splindlerは退任となった。

M. 4th CEO, Gibert Amelio:
Gilbert Amelio氏は再建屋と呼ばれる人物で、Appleを再建する目的で雇われた。彼は先ず大幅なリストラを行った。

N. 1988 Next Cube $6,500:

一方、Appleを追放されたジョブス氏はNext Cube Computerを設立し、主に大学向けなどのハイエンドユーザー向けの技術的には高いレベルの製品を開発し販売した。しかし、先進的でハイレベルなOSを搭載した製品は価格も高く、販売は伸びなかったので、赤字経営であった。また、ジョブス氏はコンピュータグラフィックアニメーション製作会社PIXARをルーカスより買収し、CEOとなるが、当時はコンピュータグラフィックのアニメーションの完成度は低かった。そこでもコンピュータでの技術革新に莫大な個人資産をつぎ込み、彼の資産はほぼ底をついた状態にまでになってしまう。

O. Mac OSからModern OSへ:
Gilbert Amello氏率いるAppleの製品MACのOSは老朽化が進みバグなど問題が多発していたため、取替えのモダーンOSとしてジョブス氏が経営するNext 社のOSを使う事になった。AppleはNext社を買収しジョブス氏も同時にAppleに復帰した。その後、Gilbert Amello氏はApple社から追放された。 Appleの主導権を握ったジョブス氏は新製品としてiMacを開発発売した。当時のデスクトップコンピュータのデザインと言えば黒で四角い形が主流であったがiMacはカラフルで丸みをおびたデザインで、しかも、性能的にも優れていたので大ヒット商品となった。Appleはこの大ヒットのお陰で経営危機から脱出しジョブス氏は正式にAppleのCEOとなる。この時点から亡くなるまでの間ジョブス氏は年俸$1でAppleの経営指揮を執り続けた。

P. 2001 iPod発売:
この時点までAppleはコンピュータ会社であったが、iPodの発表でMusic界にも入り込み大躍進を始めた。

Q. 2004 膵臓癌から復帰:
ジョブス氏は癌の種類でも最も致死率の高い膵臓癌の宣告を受ける。その後の精密検査で膵臓癌の中でも比較的生存率の高い種類の癌である事が判明し、即、手術後を勧められたが、彼はそれを拒み続け、癌は更に進行してしまった。ようやく手術を受け入れ復帰を果たしたのは癌の発見から約9ヶ月後であった。

R. スタンフォード卒業式:
膵臓癌からの復帰後、スタンフォード大学の卒業式でConnecting the Dotsや Stay Hungry, Stay Foolishなどの言葉で感動的な演説を行った。そのスピーチの動画はこちらでご覧になれます。http://www.bing.com/videos/search?q=Steve+Jobs%2c+Stanford+speach&mid=6109E1A65267C4C6A1EF6109E1A65267C4C6A1EF&view=detail&FORM=VIRE1

S. 2007 iPhone発売:
電話の再発明と言われるiPhoneの発売でAppleの躍進が加速した。2009年には一旦治まったかと思われた癌が再発し、肝臓移植を受ける。

T. 2010 iPad $499~:
発表当初はiPadに対するアナリストの商品評価はあまり高くなく、上下いろいろであったが、発売を開始してみると、好意的な販売予測の約10倍程の売り上げがあった。また、従来のコンピュータやiPhoneとは異なる商品分野として他メーカーも進出を図るが不成功に終わり殆どのメーカーは撤退した。

U. テクノロジーとリベラルアーツの交差点:
Appleはテクノロジーとリベラルアーツの交差点に位置する。単なる技術の詰め込みだけではなく、機能的に優れ、使い易さやデザイン的にも優れた製品で作品にまで昇華させる事をジョブス氏は目指していたと思われる。

V. 最後のKeynote 2011/6:
Appleのイベント、WWDCで約2時間をかけて最後の基調講演を最後まで行った。その2ヵ月後の8月末にAppleのCEOを退任した。

W. 最後のKeynote直後:
妻のLaurenceの頭にうなだれるように自分の頭を重ねるジョブス氏の姿から、これが最後のKeynoteであった事を彼自身が自覚していた事が伺われる。

X. 2011/10/5 Jobs永眠:
2011年 10月 5日にジョブス氏は永眠したが、その前日の4日に行われたiPhone 4Sの発表会は自宅のTVで見ていて満足そうであったと伝えられている。

Y. Appleのキーパーソン:
Tim Cook, CEO、 ジョブス氏が療養中の時からCEO代理を努めていた人物でその表情とは裏腹に非常に厳しい人物として知られている。
Jonathan Ive, デザイナーとして製品デザインの分野を統括している。ジョブス氏同様に美しさと使い易さを厳しく追求するタイプ。
Scott Forstall, iPhoneや iPadの OSの製品開発部門を統括していて、次期CEO候補として期待されている。

ジョブス氏亡き後のApple経営継続に関する危惧もあったが、本日の講演者である武藤氏の私見として、Apple と言う組織自体がジョブス氏の作品であり、少なくとも後数年は成長し続けるであろうと述べられた。
本日の講演資料はここでご覧頂けます。画像:Muto Applejobs 91212.pdf

以上。
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