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サウスベイ マネジメント セミナー( Southbay management seminar )は月一回のセミナーを中心に勉強し、時々に親睦をする、乃ち「よく学び、よく交友する」そのような会です。

2016年度 11月 いざという時でも慌てない!「がん」という病気への知識と心構え 講師:谷川啓司氏

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日時: 2016年11月9日(水)、6:30PM - 8:30PM
会場: ニューガーディナ・ホテル
講師:谷川啓司(たにがわ けいし)氏
講演録担当:佐伯和代

講師略歴:
ビオセラクリニック 院長 (東京都新宿区) 東京女子医大・消化器外科非常勤講師 医師・医学博士
1964年東京生まれ。 防衛医科大学を卒業後、東京女子医大・消化器外科入局。
1996年から1999年ミシガン大学医学部腫瘍外科にて癌免疫療法の研究にsenior fellowとして従事。帰国後も外科医だけでなく癌免疫療法医として多くの臨床研究に参加。
2003年より現職。 「がん」やその治療の意味をわかりやすく説明しながら、患者の持つ免疫の重要性を説いた著書の「がんを告知されたら読む本」は様々な書店やネット販売で何度となくベストセラーになっている。
講演録:   講演の資料はここをクリックしてご覧下さい。Media:Dr.Tanigawa PDF.pdf
東京女子医大で外科医としてがんの手術や抗がん剤治療などに携わってきましたが、それ以外にも学生時代から、『免疫』という研究テーマを持っていました。 「免疫」という観点から見てみると、がんについて、いろいろなことがわかってきました。現在治療をうけていらっしゃる方もがんというものがどんなものなのかもわからず治療を受けていることが多いのが現状です。そこで本日はがん自体やがん治療というものを皆さんに理解して頂くようなお話をします。
がんとはどういったものでしょうか?
がんというと「怖い」「死に至る病」といったイメージばかり先行しますが、「がん」とはなんなのか、その実態を理解するところから始めましょう。
がんの実態とは。 がんと言う塊ができるという知識は誰にでもありますが、その塊は何からできているのでしょうか? それはもちろん細胞です。つまり、ただの細胞が増え続けた結果、塊になったものです。その塊を作った細胞(つまりがん細胞)とは、いったいどんなものでしょうか。
まずその前に、私たち人間が何からできているのかを知ることから始めましょう。私たち人間の成り立ちは精子と卵子が受精した受精卵という、たった一個の細胞から始まりです。この一個の細胞が数を増やし、ただの細胞の塊だったものが、いろいろな形や役割をもった細胞に変化しながら生育し赤ん坊として生まれます。さらに細胞数は増え続け、60兆にまで増えて今の成人としての私たちの身体ができています。
細胞は生き物である以上、必ず寿命があり、定期的に死んでいきますが、それと同時に新しい細胞を作り続けることで細胞数の数を維持しています(新陳代謝)。
作られる新しい細胞も同じ正常な遺伝子をもち続けなければいけません。しかし、残念ながら大量にある遺伝子情報を間違いなくう写しつづけることは難しく、少なからず間違いが起こってしまいます。実はこの遺伝子の写し間違いを起こす細胞数は日々、数千個の単位でおこっています。しかし、それらが全てがんになるわけではありません。たまたま、ここに間違いが起こればがん化してしまうという遺伝子の部分があります。このがんになってしまう遺伝子の間違いの条件は二つあります。
一つ目の条件は細胞が増え続けてしまう事。細胞は寿命が来る前に一度だけ分裂して新しい細胞を作っておけば、細胞の数を維持することができます。しかし、寿命が来る前に2度以上分裂すれば、寿命が来る前にどんどん細胞が増えてしまいます。その細胞は、次々と生まれる細胞にその性格を伝えるために常に増え続けてしまいます。肉眼で見えなかった細胞も、いずれ塊をつくり、さらに大きくなり続けることになります。
この条件だけでは、まだがんにはなれません。
二つ目の条件は転移できる性格を持つことです。私たちの細胞は既に皮膚の細胞、筋肉の細胞、肝臓の細胞と最終の成熟した細胞になっています。同一の人間であれば皮膚の細胞は皮膚へ、肝臓の細胞から肝臓へは移植をしても簡単に生着することができます。しかし、皮膚の細胞が肝臓へとか、乳腺の細胞が肺組織には生着することはできません。それが生着できるようになる事がもう一つの条件です。 つまり最初の条件で細胞が増え続けると、大きくなる途中で血液やリンパ管といった流れのある部分に到達し、その流れにのって移動することが可能になります。そこでこの条件が同時にあれば、他の組織で生着可能となり、そこで増殖し続けて塊が確認されれば、それを転移と診断されます。
この二つの条件を同時にもつ細胞をがん細胞といい、この細胞はどんどん増え続けて塊を作り、それだけでなく、途中で血液やリンパの流れに入って移動してもそこで増え続け、転移の塊を作ることができるのです。
これらの間違いが起こるのは、細胞分裂で遺伝子を写すときに生じるただの偶然です。ただし、この偶然の頻度も一様ではなく、様々な要因でその偶然の頻度も変わります。そこには環境(住居環境、地域環境)や生活(喫煙、飲酒等)、時間(長寿)といった因子が関わってきます。
がんはあくまでも、がん細胞というただの細胞が増え続ける病気でしかありません。にもかかわらず、どうしてがんを恐れるのでしょうか?
がんは日本人の死因第一位の不治の病として恐れられ、誰もががんになることで死の恐怖を感じます。しかし、よく考えれば、私たちはがんとは関係なく必ず「死」を迎えます。

では、「死」とはどうして起こるのでしょうか?つまり私たちが命を失うとはどういう状況なのでしょうか? 
私たちの体は腕、足、内臓、いろんな臓器や器官でできています。これら全てが生きるために必要というわけではありません。なければ不便というだけで、死ぬことのない器官や臓器もあります。しかし、心臓、肺、血液、肝臓、脳など、、いわゆる五臓六腑と言われるようなもの多くは、生きるために絶対必要です。これら重要臓器が生きるために最低限必要な機能を維持できなくなれば命を失うことになります。がんが進行して死んでしまう理由も必ず同じ理由です。 例えば、肺にがんができて大きくなれば、がんの部分は肺の機能を持たないので、その分だけ肺の機能は落ちます。大きくなったり数が増えれば、その分機能がおち、最低限の肺機能を失うほどがんが大きくなれば命を維持できなくなるのです。骨肉腫なら骨の部分だけにしか癌がなければ、死ぬことはありませんし、乳癌もそうです。ただし、肺や脳といった重要な臓器機能に転移した場合命を落とす可能性がでてくるのです。
皆さんが癌と診断されれば、いよいよ治療を受けます。通常の治療は手術、放射線、抗がん剤といった三大治療です。これらは大きく二つのグループに別れます。手術と放射線治療のグループ、そして抗がん剤がもう一つのグループです。
手術治療と放射線治療:
手術も放射線もがんと診断される塊が存在していなければ治療はできません。がんはがん細胞が増える病気でありながら、細胞自体は肉眼で見ることができません。つまり、手術も放射線も、がんの実態であるがん細胞を対象としているのではなく、細胞が増えた結果、肉眼でも見えるくらいの大きさになった塊を治療の対象にしている、局所的な治療なのです。
抗がん剤治療:抗がん剤は、がんの存在部位がわかろうと、わかっていまいと構わず点滴や飲み薬で治療ができる全身治療です。つまり、抗がん剤は肉眼でも見ることができないがん細胞に対する治療でもあります。
がん細胞を一個残らず排除できれば、増える細胞がなくなるので、必ずがんは治ります。がんの進行度がStage I であれば、まだ血管やリンパ管に入り移動していない可能性が高く、局種の治療、つまり手術などで根治できる可能性は高くなります。ステージIVであれば、既に血管などを通して転移している状態なので、肉眼で見える部分を治療しても、必ず見えない部分にがん細胞は残っているので、手術をしても痛い思いをするだけで、基本的に手術適応はなく、全身治療として抗がん剤治療となります。
癌に対する抗がん剤治療。
抗がん剤はエビデンスのある治療とよく言われます。これは既に臨床試験で一定の割合の人にがんが小さくなることが認められています。この一定の割合でがんが小さくなる率が有効率とよく言われる値になります。この有効率は通常20-30%程度、とてもよく効く抗がん剤でもせいぜい40-50%程度までです。ただこの値は治る確率ではなく、小さくなる確率でしかありません。このことを知ると、多く患者さんはがっかりすることもあるかもしれませんが、放置すればがんは確実に増え続けるので、大きくならなくなるどころか、小さくすることができる事の意義はとても大きいのです。 塊が小さくなるというのは、そのがん細胞の数が減ることを意味します。
そして抗がん剤を使って、がん細胞数が減るという事は、抗がん剤がそのがん細胞を直接殺してくれているのかと思いがちですが、実はそうではありません。 抗がん剤は、増えるのを止めているだけなのです。では、増えるのを止めているだけなら、がんの塊はどうして小さくなるのでしょうか。。。
抗がん剤で増えないように止めている間に、実は、自分の「治癒力」「免疫」ががんを殺傷し数を減らしているのです。
身体の免疫の働きを考えてみましょう。これはとても本能的なもので、身体の中に異常なものがいれば排除しようとする働きです。
例えばミツバチの巣に、スズメバチが1匹舞い込んできたら、ミツバチの働きバチはいっせいにそのスズメバチを攻撃します。それと同じです。
がん細胞は元々正常だったといっても、今となっては遺伝子異常をきたした異常細胞であり、当然免疫はがん細胞を排除の対象として攻撃を始めます。しかし、残念ながらがん細胞自体も増え続けており、その速度は免疫による排除速度よりも速いのです。したがって、免疫が働いているのに、がんは増え続けて大きくなってしまうのです。

がんは初めてがんができたころから、このがん細胞が増える速度と、免疫が排除する速度の差の速度で増え続けます。最初は肉眼で見える大きさではありません。しかし、いずれ肉眼でも見えるようになり、いよいよ我々はがんを診断される時が来ます。そこで、手術や放射線といった塊を排除する治療を行ったとします。そこで、その排除される部分にすべてのがん細胞が肺っていれば、がんは根治します。しかし、血管やリンパ管で移動しているかもしれないがん細胞を私たちはどんな機器を使っても診断できません。もし残っていれば、手術の後に、やはり同じ速度で増え続けて、いずれ検査で見える大きさになります。その時再発と診断されます。これに対して抗がん剤はがんが増える速度を下げる薬ですが、この時がん細胞自体が持つ増殖の速度が減らされて、その増える速度が、免疫による排除速度を下回るほど減らすことができれば、がんの増える速度よりも免疫により排除される速度が上回るので急激にがんは小さくなることができるのです。つまり、抗がん剤は、がんの増殖速度を減じることで、免疫の排除速度を下回るように力のバラスの逆転を狙っている治療になります。
しかし、現状の医療をもってしてもがんが根治していることはあまりありません。がんが増える力と免疫による減らす力のバランスの逆点を狙う方法をがん自体の増殖力を減らす事だけでなく、排除する免疫の力を上げる新しい試みが今、模索されているのです。
どうすれば免疫を上げられるのか、そのためは、まずどうして免疫は、うまくがん細胞を攻撃できないのか?を理解する必要があります。
*相手を敵として見つけにくい
免疫は異物を排除する力ですが、異物であることがわからなければ何もすることができません。ところが、がん細胞はもともと正常細胞であったもので、免疫細胞にとって異物だと判断できる外見上の違いや特徴がとても少ない細胞なのです。区別できる特徴が少なければ、見つけて攻撃する頻度も減るし、そもそも区別する特徴自体が少なければ対応も難しくなります。
*免疫の攻撃を邪魔される
免疫は私たちの正常組織を攻撃することは基本的にありません。しかし、がんは異物でありながらも、自分が正常である振りをして免疫からの攻撃を避けるように働きかけるというメカニズムは解明されてきました。
*現場の士気も落ちている
免疫は私たちの身体の防御という役割を担っており、そこには現場で働く選手や兵士といった多くの力と、それを指示・指導するコーチのような存在があります。異物の目印を指示して攻撃目標を教えたり、また攻撃させないように邪魔させたりといったメカニズムは、主に指導するコーチ側によるものですが、現場の戦力として士気が下がるようなことも起こっており、これも免疫がうまく働かない理由の一つにもなっています。
免疫療法(免疫を上げる方法)
がん細胞を敵として見つけにくいことの対策
異常な侵入者に対する私たちの免疫反応には、見つける専門の細胞と、攻撃専門の細胞が存在しています。攻撃専門細胞は普段は待機しているだけの状態で、自らが攻撃状態になることはありません。ところが見つける専門細胞が異物の存在情報を察知すると、攻撃専門の細胞に戦闘状態にさせるべく活性化刺激を与えるのです。しかし、がん細胞に関しては正常との違い自体があまりないため、見つける細胞も気づく機会が少なく、またそれに伴って攻撃細胞への活性化刺激を与える機会があまり訪れません。そこで、攻撃する免疫細胞(リンパ球)を採取して、強制的に体外で活性化刺激を人工的に与えて身体に戻す方法が考えられました。これを活性化リンパ球療法と言います。さらに、私たちの身体の免疫は気づいていなくても、がん細胞の外見上、区別できる目印があり、これを自分たちの免疫に目印と新しく教えることで、これまで対応できなかったがん細胞を新しく攻撃できるような対応をさせることができるようになりました。このように、今まで気づいていなかったがん細胞の目印・特徴を免疫に伝えることをワクチンといいます。この目印や特徴は私たちの免疫の細胞である樹状細胞という細胞の働きで行われます。そこで私たちの樹状細胞を採取して、がんの目印を強制的に与えて身体に戻すことを樹状細胞ワクチンと言います。どちらの方法も、がん細胞を見つけにくさに対する免疫反応を増強させる手段になります。

免疫の攻撃を邪魔されることの対策
免疫はがん細胞の外見上のある特徴に対してこれを攻撃しようとします。しかし、がん細胞は増殖するうちに、私たちの免疫に働きかけ、自分は仲間であるために攻撃をかけさせないように働きかけ、それに応じてしまう免疫細胞を誘導するというシステムがあることがわかってきました。このようにがん細胞の攻撃をさせないように邪魔をする働きを免疫チェックポイントと言います。このメカニズムがわかってきたために、これを阻害することで本来のがんに対する免疫反応を邪魔されることなく、攻撃ができるようにさせる薬が開発されました。これを免疫チェックポイント阻害剤といい、今世界中で画期的ながん治療薬として研究開発が進んでいます。
現場の戦力が落ちていることの対策
免疫の基本的な力が既に不十分であったり、がんがあるために低下させられたりすることもあります。これらの基礎的な力を上げるために、様々なことが補完・代替医療として利用されることがあります。それには食事療法、サプリメント、漢方医療といったもの、心身療法や鍼灸・マッサージなど、心理療法やカウンセリングによっても免疫を上げる事ができます。そして症状を感じなくさせる緩和医療も免疫の低下を防ぐ方法と考えられます。これらによって、がんが治るわけではありませんが、免疫を少なからず上げる事により、がんの進行を抑制したり、がんを刻激する免疫によっての補助的な効果を発揮します。
がん治療と心の問題
がん患者の心理状態の変化はがんを告知された以降に始まります。また、がんとの係の有無に関わらず、何らかの症状があると突然不安になるような変化を生じます。この心理状態の変化は正常状態と抑うつ状態とが繰り返すように現れ、基本的には抑うつ状態が優勢になります。
心理的に抑うつになると、様々な症状も過度に敏感になるために出やすくなり、これがさらに不安や心理的抑うつを誘導します。 心理的抑うつは免疫の低下も起こすことも以前から知られており、この心理的な抑うつが免疫力の低下を、そして免疫の低下が治療に抵抗したり、病状を進行させたり、これが結局症状の悪化につながり、心理的な抑うつを誘導するといった悪循環に陥りやすくなります。したがって、この悪循環を断ち切ることががん治療によっては重要になります。
増えるがん細胞 VS 減らそうとする免疫
がんに対する考え方のまとめです。がんと言う病気はあくまでも、がん細胞自身が止まることなく増え続け、血管やリンパ管といった部分侵入することで身体の様々な部分にまで移動し増えることができます。しかし、それと同時に、私たちの免疫もがん細胞を異物としてとらえ、これを排除しようとしています。
つまり、身体の中では増えるがん細胞と減らす免疫との闘いが常に繰り広げられています。この二つの力のバランスを常に私たちに有利になるようにもっていく必要があります。がんとの闘いは勝ち負けで語るのではなく、増えるがんをおさえ、排除する免疫を上げる事で、体内のがん細胞数の増加を防ぎ、可能ならばその数を減少させるようにすることを考えることが必要です。

増えるがんに対しては、現代の医療の大半がこの対策になっており、細胞が増えた結果、塊として存在するものに対しては、その容量を減らす手術や放射線治療が、そして、増えようとする力を減じさせるのが抗がん剤治療です。また減らそうとする免疫の力を上げるために、見つけにくいがんに対して少しでも攻撃性を増すように、活性化リンパ球療法、樹状細胞ワクチン療法、また温熱療法なども行われています。また免疫の反応を邪魔するメカニズムの解明により、免疫チェックポイント阻害剤の登場がこれから大きな力となるでしょう。そして、皆さん自身ができる免疫を上げる方法は、少しでもがんの実態を含む意味を認識し、恐れることなく、前向きに対応していくことががん治療を有利に運ぶことになるのです。
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