日時: 2010年10月13日(水)、6:30PM - 8:30PM
会場: ニューガーディナ・ホテル
講師:成田美栄(なりた みえ)氏
講演録担当:内藤喬生
講師略歴
1967年、神奈川県横浜市生まれ。近所にあったサンモールインターナショナルスクールに3歳から13歳まで通う。13歳から一人でアメリカに渡り、ホームステイ先のミズーリ州に6年住む。1986年にUSCに入学,1993年に同大学院歯学部卒業・カリフォルニア歯科医師免許取得。9年間の勤務医を経験後、2002年に妹の成田真季先生と念願のトーランス・コスタメサオフィスを開業、現在に至る。
講演内容
予防治療
虫歯とか歯槽膿漏の原因は、歯垢(汚い言葉で言うと歯クソ)からくる。
砂糖+バクテリア=酸(Acid)→酸+健康な歯=虫歯(Dcay)
ということになる
キャラメルなどの砂糖を含んだネバネバしたものが一番歯によくない。このようなものが歯間ポケット(歯と歯との間にある隙間)に入り、歯や歯茎やひどいときには歯の根元の骨まで損傷を与える。損傷とは、物理的な作用というより化学反応である。つまり上に述べた酸が骨まで溶かしてしまう場合がある。だから予防として、食事をしたときの残存物を歯間ポケットや歯の表面から取り除くことが大事である。
虫歯、歯槽膿漏だけでなく希に心臓障害を起こす場合がある。歯の周りには毛細血管があり、それは当然大きな血管、心臓へと繋がっている。特に心臓に疾患をもっている人が、歯にあるバクテリアが心臓にまで達して、よりひどい病気になることがある。17万人に一人ぐらいしか発症しないが、成田さん自身3人の患者に遭遇したという。それも、彼女のクリニックで一人この病気にかかった人を診たことがある。高熱になり、からだ全体がダウンして、抗生物質を何週間も投与しなければ治らないという大変な病気である。たかが歯のことと思っていては、大変な病気になることがあるので気をつけなければならない。
口の中を見ると、その人が患っている病気や体調をある程度知ることができる。たとえば高血圧、リューマチ、てんかん、肥満、血液疾患など、それに、アレルギー体質とか更年期障害なども分るという。プロジェクターに細かくリストアップしていたが、すべてコピーし切れなかった。太っている人は下舌(したべろ)(?)も太くなるという。
実際に彼女の患者のなかにいたというが、拒食症(過食症も)の人が4ケースあった(主に若い女性)。そのような人に、本人や親にカウンセリングをしたことがある。
歯垢の取り除き方
歯の病気になる一番の原因が歯垢である。歯垢をどのように取り除くか? 歯ブラシはよいが、それよりフロス(糸のようなもの)が一番効果がある。フロスによって歯間にある食べ物の残存物を取り除くと、バクテリアの発生を防ぎ、虫歯や歯槽膿漏になりにくくなる。
食事後1時間以内に、約2,3分間フロスや歯ブラシをすればよい。フロスはせめて一日に1回するのがよい。フロスを歯間に入れるのはなかなか難しい。特に奥歯の歯間にフロスを入れるのに少し練習する必要がある。市販の鳥居のような形でフロスの部分が短いものより、長い糸状のものの方がよい。なぜなら、糸状のものは、歯間の奥のあたりを隅々まで入れることができ、腐敗物を取り除くのに適しているからである。
歯ブラシは柔らかいものの方がよい。動物の毛のものは柔らかくても、ばい菌が付着しやすいのでよくない。歯ブラシで歯と歯茎の間を45度の角度で磨くとよい。フロス、歯ブラシの後、水で激しくうがいをするとよい。なかには知覚過敏症で歯磨きをして歯にしみるような人は、過敏症用やフッ素入り練り歯磨きがよい。
1年に2回の定期検査とクリーニング
ロスの水道は硬水であるので歯によくない。だから年に2回の定期検査とクリーニングを勧める。たとえ毎日のフロスと歯磨きを実行しても完全なクリーニングはできない。そこで年に2度クリーニングをするとよい。結果として、歯科医にかかる費用が少なくなる。この事情を保険会社はよく知っているので、アメリカではクリーニングに対して、ほぼ100%の保険がカバーしてくれる。
新しい歯科医療技術
レーザーを使った歯の洗浄の仕方がある。
移植技術も進歩し、骨や歯茎でさえ移植できるようになっている。麻酔も痛みや痺れさえ感じないものが開発されている。材質もセラミックなどを利用したりしている。入れ歯も部分入れ歯から総入れ歯まで、材質や技術が月進日歩している。
ブリッジ、インプラントなどの技術も進んでいる。ブリッジとは人工歯を入れるのに、その両脇にある歯の一部を切り取り固定させる方法である。インプラントとは、歯の根の部分を取り除いて、根になるねじのような部分と歯(人工)が連結したものを植えこむ方法であるい。インプラントの方がよい。というのは入れようとする歯だけに集中し、強い。また下だけの入れ歯の場合、インプリントで使ったねじのようなものの上に、留めるようなものをつけて、入れ歯を簡単につけたり外したりすることができる。
質疑応答で出た注目すべき話
質:電動歯磨きと普通の手でやる歯磨きとどちらがよいか。
答:電動の方がよい。
質:電動で歯ブラシが回転するものと、横揺れ運動だけのものとどちらがよいか。
答:歯科大学での見解が違う。アメリカの大学を西海岸、内陸部、東海岸と分けると、その答えは微妙に違う。近頃は回転、横揺れを両方できるものが販売されるようになっている。それほど高価ではない。
質:「見栄先生に診察してもらえると思いクリニックに行ったが、先生はおられず、他の人に治療してもらった」。どうすれば見栄先生に診てもらえるか。
答:アポイントメントをとる。トーランスだけのオフィスしかないとき、一人でやっていたが、客がどんどん多くなり、お客を待たせることになり苦情が多くなった。仕方なく一人、二人と雇ってきて、またコスタメサも営業するようになり、現在は6人雇っている。
この質問から派生して、トーランスのオフィスの建築の話になった。オフィスはハーバード大学建築家を卒業した妹さんが設計した。ナリタファミリーデンタルという名前があるように、家族的な雰囲気をつくることに工夫した。子供を治療するとき、両親が側に坐ってお子さんを見れたり、ベビーカーが診療室に入れるようなスペースを考慮に入れた。もちろん車椅子も入れる。だから、スタッフが待機する部屋はとても狭くてキュウクツになっている。お客さん本意になる設計を妹さんと議論しながら、妹さんが素晴らしい設計図を作ってくれた。
質:歯と栄養の関係。サプリメントは効果があるのか。
答:もちろんよい食べ物は健康な歯を維持するのに重要である。ビタミンDのサプリメントはカルシュームとの関係でよいだろう。
質:「私は成人してから、一時ベジタリアンであったのだが、子供のとき虫歯など一本もなかったが、ベジタリアンになってから虫歯になった」。ベジタリアンと虫歯との相関関係はあるのか。
答:関係はない。ただ偶然に虫歯になったときベジタリアンを始めた時期ではないか。
質:うけ口で、上の歯と下の歯が正常にかみ合っていないのだが、大人になっても矯正はできるか。
答:大人になれば、あごの骨が固定しているので無理である。矯正の技術も金属のものが嫌がられる人もいるので、違った素材でできるようになっている。これも日進月歩進歩している。
質:マウスウォシングの薬があるが、それは効果があるのか。
答:ある程度ある。ただ、歯垢を取り落とすのは、歯ブラシ、フロスが一番大事で、その後、マウスウォシングの薬を水に混ぜて、うがいをすると効果がある。フッ素が入っているマウスウォシングの薬は、歯にしみるような人に勧める。
質;チューインガムは歯によいのか。
答:シュガーフリーのチューインガムは悪くはない。ただ歯垢を取り除くのは、歯ブラシのような摩擦によるものがよい。
質:ホワイトリンクについいて。
答:以前は歯のエナメルを少し弱めたり、歯が沁みるようになることがあったが、近頃はよい方法が開発されている。
質:アメリカより日本の歯科治療の値段が高いと思うのだが、その実情はどうか。
答:日本とアメリカとで使っている素材が違うことがあるし、またアメリカは人件費が高いということもあり、アメリカの方が高いと思うところもあるが、アメリカでは保険がきくケースが多いので、一概にアメリカの方が高いとはいえない。ところで保険のことだが、歯科医ほどではないが、普通の医者は高い保険を払っている。それは患者が訴えるケースがあるからである。そのため、医者は保険会社に高額の保険料を払っている。
「歯科医は、2年に一度免許更新を行なう。歯科医療は日進月歩進歩しているので、絶えず勉強していかないと新しい時代に乗り遅れてしまう」と、講演会を締め切られた。