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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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背後占い『字念屋』 消えた背後文字・番外編2 (連載もの15)

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ひとは誰しも自分を見失うことがある
それは字念屋を生業とする者も同じように


今から十年前
字念屋を開業して一年が経っていた

お母さん
しばらく字念屋は休業することにしたの
もしかしたら廃業ってことになるかもしれない
だからㅤうちの和菓子屋を手伝うから

どうかしたの?

背後文字が見えなくなって

そう
背後文字が見えなくねえ
……えっ
見えなくなったって一二三(ひふみ)
まさか背後文字が
中核文字や他の字念もなの?

そうよ

あなたㅤあなた
たいへんㅤたいへん
一二三が見えなくなったって
どうしましょう

どうしたって?

だから一二三ㅤ背後文字が見えなくなったのよ

そうか……
まあㅤこれで一二三も普通の女性になれたわけだから
いいんじゃないかㅤそれはそれで

あなたはそんな呑気なこと言って
キャンディーズの引退じゃないんだから
(アイドルグループの「普通の女の子に戻ります」という引退時の言葉)

うわっ
散々悩んで実家に帰ってきたと思えば
夫婦漫才が始まっちゃうんだから
でもなんだか結論が出たような気もするけど
もう疲れ果てたから二階で寝るわ


一二三が背後文字が見えなくなったのは、これが二度目。初めは高校一年生の時、バスケットボール部の先輩に恋をした時であった。普段は電子辞典ばかり読んでいる文学系の一二三。ある日、友達に男子バスケットボール部の練習を見に行こうと誘われ、爽やかにジャージを着こなし、華麗なショートを放つ先輩に一目惚れをした。誰しもそのような体験の一つや二つはするもので、一二三も例外ではなかった。ただ、その恋は憧れで終わってしまい失った能力は直ぐに元へと戻った。ひとから発する背後文字の読み取る能力を持っている者にとっては、恋をするような感情の高ぶる状態が続くと異変が起きてしまう。集中力の鈍化、背後文字が見えなくなる。
今まで一二三のような能力を持って生まれ育った子どもの事例は、世界で数件の報告がされている。しかし、二十歳を迎える前に能力は消えてしまうという。成人後、その能力を失わない奇跡的な例は、一二三と成人してから突然に能力が発動した一二三の曽祖父くらいであった。
その能力は安定した心を保ち続けなければ維持ができない。恋をすることにより、心が激しく揺れ集中力が欠いてしまえば当然、字念を見ることなど不可能である。すなわち、恋でなくても心を大きく揺さぶられる出来事に感化され、能力は薄れてしまう。静まった心で念の力を発動、それが字念屋を営むということに繋がる。選ばれし者の生業であり、能力を持続させることは強い信念がなければならない。天命を尽くす為の根拠が必要であるように。
ひとのために尽くし喜びを得ることに何の悩みもなく、背後占いを字念屋として営んできた一二三。だが、相談者は日に日に増えて疲労だけが蓄積していく。ひとの幸せのために、背後占いで道を導いてきたはずだった。そして、ふと自分を振り返ってみれば、いったい私って何者なの、私を導いてくれるひとはいないの、そんな自分への疑問が浮いては沈み、だんだん背後文字が見えなくなってきた。


ねえㅤあなた
一二三はいつまで寝ているのですかね
もう二日も起きてこないわよ
声をかければ
うーん
なんていうから生きているみたいだけど
病院に連れて行った方がいいのかしら

疲れているんだよ
そっとしておこう
一二三は我々では到底わからない世界で生きているんだから
とことん疲れているんだよ

ほんとうにあなたって動じないひとね
自分の娘だっていうのに

今はそっとしておくこと以外にないだろう
二日寝ているから病気って考える君のほうに問題ありだよ

はいはい
私はどうせ心配性の馬鹿な女ですよ
あなた早く仕入れに行ってくださいよ

ああㅤやれやれ
お母さん(一二三の祖母)に相談してみれば
お爺さん(一二三の曽祖父)は背後占いでひとびとを助けてきた人なんだろ
きっとㅤなにかわかるかも知れないぞ

そうね
お母さんに連絡をとってみる

そうだね
仕入れに行ってくる

行ってらっしゃい


一二三の母は、さっそく実家の母に電話を入れた。
その話の内容はこうだった
曽祖父も一度、背後文字が見えなくなったことがあった。その理由は、子どもだった祖母にはわからなかったが、曽祖父は九日間も小さなおむすびを食する時とトイレに行く以外はずっと寝ていて、子ども心に父親は死んでしまうと心配したことがあったという。そして、十日目の朝に「わいは九尾の政木狐だからの(南総里見八犬伝では善玉の九尾の狐である政木狐がおり、千人の人の命を助けたことで「狐竜」に変じ昇天した/ピクシブ百科事典より)。九尾分を眠らないとダメなんじゃ。ああ、よく寝た」と、清々しく起きてきたという。曽祖父になにがあって背後文字が見えなくなり、どのような経緯で能力が復帰したのかはわからない。ただ、九日間を寝ていたことは、どうやら能力が復帰したことに関係があるようだ。


なあㅤそんなところだよ
一二三も九日間は寝ているんじゃないか

えっㅤ九日間も寝ていたらたいへんよ
頭がおかしくなってしまうわ

大丈夫だろう
この際ㅤ字念屋は廃業して
一二三には普通の人生を歩ませた方がいいよ
俺はこのまま背後文字が見えないことを望むよ
普通が一番だよ

普通ってなに?

だから良くもなく悪くもなく平和な生活をすることかな

それって夢がないってことじゃない
わたしは一二三しかできないことで夢を見て欲しいなあ
人生は楽しまなくては意味がないわよ

そうかなあ
まあㅤひとそれぞれの考え方
生き方が違うからな
否定はしないよ

どうしてそんなあなたと結婚したのかな

その言葉ㅤ全部そのまま返すよ

……お互い違うからㅤ面白いのかもな

そういうことにしておきましょ

そして、十日目の朝が来た
二階から窓の開く音が居間に響き、階段をリズムよく降りてくる音が後から追いかけてきた

おはよう
わたしㅤどれだけ寝ていたの?

九日間

なんだか夫婦でそんなに声合わせちゃって
仲がいいんだから
ふっ〜ㅤよく寝た
わたしは九尾の政木狐だから
九尾分を眠らないとダメなのよ

えっ
ほんとだ

またまた ㅤ声を合わせちゃって

なんだか心配して損した感じだな

そうねㅤあなた
でも一二三が元気になってよかった

ありがとう
この度はお世話になりました
お父さんㅤお母さん
わたしこれから字念屋の再開準備するから
行って来ます

おい
店の手伝いはどうしたんだ

ごめんねㅤお父さん

ご飯は食べなくて大丈夫なの
栄養不足よ

大丈夫
こっそりけっこう食べていたから心配しないで
行ってきます

そうかㅤ行ってらっしゃい
行ってらっしゃい

ところで背後文字は見えているのかな?

あの調子だとかなり鮮明に見えてそうよ



誰しも
これ以上は進めないだろう壁が立ちはだかる時がある
乗り越えるための答えはひとそれぞれ
その答えは必ずあなたの中にあり
壁はいずれ崩され平らな道が続く
空を見上げれば心迷わす雲は消え
その道を堂々と進めばよい

#背後占い字念屋の詩

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