失恋の痛手
Apr
6
何かのイベントが行なわれているらしい。陸上競技が行われるようなフィールドの周りにさまざまなkioskがあり、人々でごった返している。
フィールドの中央にはカーペットが長く敷かれ、途中でUターンしてほぼ元の位置に戻るようになっていた。そのカーペット上に、幾人かの人が配置されている。開始部分のところには、Healing sessionsというサイン。あまり人気がないのだろうか、お客の姿はない。
主催者である女性はゴール付近の位置で待機していた。彼女は何のヒーリングを主にしているのだろう?それともただこのイベントを担当しているだけのコーディネーターなのかな?
そんなことを思いながら見ていたら、いつの間にかカーペットの上を歩いていることに気付いた。わたしが通り過ぎたところで、男性が慌てて所定の位置についたのが見えた。占いか何か?易者の格好のように見えた。後で引き戻ってみてもらうことは可能だろうか?と思いながら進む。
「こちらへどうぞ」
女性の声がして振り向くと、二人の女性がわたしのことを待っていた。一人は台湾人?ベトナム人?なのかな?東南アジア系な感じがした。おどおどとしていて言葉を発しない。その後方で、日本人女性がにこにこと笑っていた。彼女が師匠?なのだろう。「ここへ座ってください」と言われた。
ここでいいのかな、と、椅子も何もないカーペットの上に腰を下ろした。アシスタントらしき女性は、こくりと頷きながら、ゆっくりとわたしの左腕をとった。どうやらマッサージ?をするらしい。服は着たままである。
されるがままに腕を差し出すと、彼女はふるふると手を這わせながらわたしの左腕全体を触った。いや、触っているような感覚はないのだが、かすかに痺れるような、それでいて、とても気持ちが良い。ちょっと驚いていると、日本人女性の方から「いかがですか〜?」と訊かれた。
「あの、気持ち良いです。とっても」と答えると、わたしの腕を取っていた女性がいきなりわっと泣き出した。びっくりしていると、「ごめんなさいね」と日本人女性の方がその女性をなだめながら言った。そして、「彼女は難病を克服して、こうしているんです」と言う。
はぁ・・・難病を。。。。わたしはなんて言ったら良いのかわからず、ただ黙っていた。難病というのはなんだろう?言葉を話さないのはそのせいなのかな?それとも単に日本語がわからないのか?どういうことだ?
女性の代わりに日本人女性の方がマッサージをします、と言い出した。そして、座っていたわたしの頭頂部を見て、あぁ。。。ここに大切な人を失った悲しみが残されていますね、と言う。「失恋の痛手がここに残っています」
え????それを言われるまで全く気が付かなかったのだが、わたしの頭頂部はかなり髪の毛が薄くなっていた。大きさは、小ぶりなサラダディッシュ程度だ。かなりの範囲。今までなぜ気付かなかったのだろう?こんなに髪がなくなっていたなんて。しかも、失恋て、誰のことだ?もしかして、あの人のこと?でも、あの人に失恋したのって、かなり前だよ?もうすっかり忘れていたくらいだ。なのに、まだその痛手を負っているってことか?まだ癒されていない、ってこと?そして、はははははハゲてきた???
ちょっと驚いた。いや、かなり驚いた。
二人は神妙な面持ちで、こくりと頷き、わたしには癒しが必要だと言った。
わーお。
続きは後で。(この先、なぜかわたしは追われる身になる)
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