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リサイタル

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02/16/2022








幼馴染のmはピアノを教えている。
mの亡くなったお母さんは教会のオルガン奏者で、mは小さな頃からピアノを習っていた。
わたしが一時期だけピアノを習っていたとき、我が家にはピアノなんて(オルガンすら)なかったので、時々mの家に行って、ピアノの練習をさせてもらった。
でも子供心に、なんとも場違いな感じがして、だんだん足が遠のいた。
先生からは毎日鍵盤に触れなさい、指を動かしなさい、どうしてもピアノに触れられないなら紙の鍵盤(バイエルの付録)で練習しなさい、と言われた。
mのお母さんからは「いつでも良いから来て練習しなさい」と言われたらしいが(母がそう言っていた)、これがどうして、なかなか行きづらかったのだ。大体に、mのお母さん(わたしの母の姪にあたる)はすごく厳しい感じがしたし、mの祖父(わたしたちは「ちゃん」と呼んでいた)は「金ハブ」と言われていたくらいで、わたしにとってはものすごく怖い存在だった。mの祖母(わたしの母の姉。わたしたちは「おっかん」と呼んでいた)は「ちゃん」よりは優しかったけど、やはりちょっと近寄り難かった。なので、彼らの家でピアノの練習なんて、とんでもなかった。

mは姉3と同じ歳で、ふたりは小さい頃から特に親しかった。mと姉3とが、大きなビーチボールを抱えて座っているまだ赤ん坊だった頃の写真もある。双子かと思うくらい、ふたりは良く似ていた。

わたしはある時ピアノ教室を辞め、同じような時期にmは本土の学校に行くために島を出た。後から聞いた話では、九州のどこかの進学高校から音大に入り、卒業したとのことだった。
そして、気づいた時にmは島に戻っていて、いつの間にか島の人と結婚していた。その間、あの、わたしが密かにおそれて(畏れて)いたmのお母さんは亡くなり、ちゃんもおっかんも他界した。


mが結婚して、子供たちが出来て、わたしにも娘が出来(mの最初の子と娘は同じ歳だった)島に連れ帰ることが多くなり、また付き合うようになった。もちろん、わたしよりも姉3のほうが親交が深かったと思う。しばらく疎遠だったのに、そんなことは気にもならないくらい自然に繋がっていった。
いつだったか、島に帰省した時に我が家に遊びに来たmは、わたしの顔を見るなり、歳とったね〜、と言うので、はぁ〜〜〜〜???と言いながら、大きく笑った。さすが、親戚だわ、と思う。そこにお世辞とかはまったく存在しないのだ。笑


ある時、mに某音楽会に招待された。
彼女は合唱団に入っていて、何かの合唱コンサートが開かれるとのことだった。mは「面白くもなんともないかもだけど」と言いながら、それでも出来ることなら大勢の人に来てもらいたいから、と言って誘ってくれた。
わたしたちは、喜んで出かけて行った。わたしと、姉2、姉3と。娘も一緒だったかもしれないが、よく覚えていない(娘よ、ごめん!)。

何曲かの合唱があり、そして、ある曲を、mがピアノ奏者として演奏した。
mは舞台中央にあるピアノに進み出て一礼し、座って、ひとつ深呼吸をして、指揮者を見上げ、コクっと頷いた。指揮者は対応するかのように指揮棒を上げ、振り下ろされると同時に、mのピアノが鳴った。

わたしも姉2も姉3も、うーわーーーーm!!!!と、心の中で拍手喝采しながら、見て(聴いて)いた。演奏しているmは、いつものmじゃなくて、でもやっぱりいつものmでもあって、魔法のように動く指や、揺れる体、指揮者を見上げる目、何もかもが素晴らしくて、曲が終わってから、わたしたちは手が痛くなるほどに拍手した。すごい、すごい、すごいーーー!m、かっこいいいいいいい!!!


帰り道、姉3が「発表会というのは良いね」と言った。「人前に出て、発表する、ということは、やっぱり、良いことだと思う。」と、言った。わたしたちは皆、気持ちが高揚していて、mがちょっとだけとちったような箇所があったことも、その時にmが、ちょっとだけ笑ったような気がしたことも、全てが最高のものだと言い合った。


あの時のことを、時々、思い出す。
どうして、人前で発表することが良いことなのか、ということを考える。
わたしはそういうのがとても苦手だ。試験とかも大嫌い。出来ることならそういったことから離れていたい。誰かに批評されるのは避けたい。その他多勢に埋もれて、人知れず、ひそかに、ひっそりと。

でも、時々、思い出す。
演奏を終えた時の、mの晴れやかな表情。何よりも、演奏している時の、mの、自由な動き、何者でもなかった、あの感じ。
そして、それを見た時の、そのときを共有したわたしたちの、あのしあわせなひととき。


発表会、というのは、そういうことのためにあるのかもしれない。
よくわからないけれど、わたしたちも、mも、そして多分そこに居合わせた全ての人たちが、何かを受け取り、味わった。


わたしは、島に帰って、mに会う度に、「リサイタルをしよう〜」と言っている。mは、そんなこと出来ん〜と、笑っているが、本気でそう思っていて、どんな風に行うかのも考えているし、mに演奏してもらいたい曲も考えている。(mは練習する期間が必要だから、と言っていたので、まんざらでもないのだと思う。笑)
計画としては、6〜8曲。休憩を入れて、その休憩時間には、手作りのケーキと美味しい珈琲または紅茶をお出しする。招待したい人もある程度、決まっている。少人数の予定。
そして、無事にリサイタルを終えた夜には、我が家に移動してお疲れさん会。姉3の手作りピザと美味しいワイン。そして、姉2のギターで歌おう。


と、ここまで具体的だと、実現しないわけがない。と、確信しているわけです。











#日記

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