02/17/2022 Johnny(仮名。大好きなJohnny Weirとどこか似ているので)から初めて声をかけられたのは、11月末頃だったと思う。 ランチの時間だ。 生徒は、バーコードの付いたIDををスキャンすることで、ランチの費用を支払う。 (ちなみに、うちの州はパンデミック以来BreakfastもLunchも無料となっている。有料になるのは追加分のアイテム。2皿目のメインディッシュとか、ドリンク、スナック類など。) ランチはA, B, Cの3グループに分けられていて、時間になるとカフェテリアのシャッターが上げられるのだが、大勢の生徒が我れ先にと入ってくる。まさに大波が押し寄せてくるような、凄まじい光景だ。 わたしは大抵、Post 2と呼ばれるレジを担当していて、それぞれの生徒のIDをスキャンし、残金を確認しながら追加アイテムを渡す。全員がIDを持っていればスムーズなのだが、持って来ない(忘れたではなく、持って来ない、、)生徒も多く、その度に名前をタイプしなければならない。生徒たちの食事時間は30分程度で、ベルが鳴ると次のクラスに向かわなくてはならないので、みんないつも急いでいる。そんなに急ぐのであればIDを持って来れば良いのに、と思うけれど、若い人たちにはそれが分からないらしい。 そういうわけで、レジはいつも長蛇の列になる。IDを持っていない子の名前を間違えてタイプすると、余計に時間がかかり、並んで待っている生徒たちはもちろんのことだが、当の本人が、Not D, I said E!!とか言ってきて、はぁ?とか思う。こともある。 たま〜に、その態度はどうよ?という感じで、黙ってじーっと見つめると、I'm sorry..と返す生徒もいるが、ふてぶてしい態度のままの生徒もいる。やれやれ。 前置きが長くなった。 そんな長蛇の列の中にJohnnyはいて、いきなり、xxxx xxx xxxxxxxxと、マスク越しでも真っ赤な顔をしてるのがわかるほど、はにかみながら言った。 一瞬、ん?と、思う。良く聞き取れなかった。英語じゃなかったような、、、? すると、彼は意を決したように身をただし、 アナタ ハ ニホンジン デスカ? と言う。おおおおおおおおお、と思いながら、Yes, と口にしたあと、慌てて、はい、そうです。と、答えた。すると今度は、 アン ヲ シッテ イマスカ?ワタシ ノ トモダチ デス。 あらーそうなの。知ってる、知ってる。日本語、上手ね。 そう言うと、彼は頭をぶんぶん振って、でも嬉しそうにこう訊いてきた。 アナタノ オナマエヲ オシエテ クダサイ。 そこで名前を告げると、何度もわたしの名前を繰り返した後、 アノー、チップス ガ ホシイ。 と言って、買った。それが一番最初の会話で、たった二言三言ではあったのだが、後方に並んでいる生徒たちはなんだなんだ、と見ているし、彼自身もそれを感じたのだろう、その後、ジャ、サヨナラ!と言って、去っていった。 それ以来、Johnnyは毎日、わたしのレジに来る。 ほとんどの生徒は、トレイに載せたLunch mealを持って並んでいるのだが、彼は何も持たずに列の中にいる。そして、自分の番になると、 mサン、コンニチハー。 と言って、日本式に頭を下げて挨拶をする。わたしも、つられて、こんにちは。と頭を下げる。 彼はずっと同じチップスを買い、わたしと日本語で話すことを至福の時間と思ってくれているらしい。ものの20秒ほどの時間。 何度もわたしのレジに通ってくれるので、彼が日本語を学んでいるということ、日本が大好きだということ、さらには来年の夏から1年間、日本の高校に留学する、ということを知った。 彼はそれらを英語ではなく、拙い日本語でわたしに教えてくれた。(今では、後ろに並んでいる生徒たちは、「またかよ」という感じになっている。)そして、毎日、何か新しいフレーズを使おうと努力していることが伺える。 そんなある日。というか、昨日のこと。 いつものようにやって来た彼は、mサン、コンニチハ〜。と頭を下げながら挨拶したあとに、 ツマラナイ コトデ イジヲ ハッテ チャ アカンデー! と言った。 は???わたしは目が点になる。でも彼はわたしが良く聞き取れなかったのだと思ったのだろう、さらに明瞭な声で繰り返した。 ツマラナイ コト デ イジ ヲ ハッテ チャ アカン デナー!!! なんじゃそら!!と思ったが、張ってない、張ってない、と言うと、彼はパァッと明るい顔になって、 ワカリマシタ カ? カンサイ ベン デス! と、誇らしげに言った。 あちゃー、、、と思ったが、何せ時間がない。その日本語の意味をわかっているのかどうか、英語で訊いてみようかとも思ったが、それもかわいそうだと思う。なぜって、こんなに嬉しそうな顔をしているではないか、、、。 そこでわたし、昨夜は、彼の言った日本語を英語でメモに書いた。今日、会ったときにそっと渡そうと思ったのだ。きっと、アニメか何かのセリフだろう。一生懸命、覚えたのだろう。それを笑い飛ばすことは出来ない。こういう意味なんだよ、ということだけ伝えよう。そう思った。 なのに、その小さなメモを紛失してしまったバカなわたし。せっかく良い作戦だと思ったのに。ランチサーブの直前に気付いたので、新たに書く時間もなかった。まぁいい。明日でもいっか。 と思っていたら。 なんと、今日Johnnyはわたしのところに来るなり(ちゃんといつも通りの挨拶の後だけど)、 ニホンゴ ヲ マチガエ マシタ。チガウ ニホンゴ デシタ。 コンナ トコロ デ ガンバッテ イマス ネー! 全然、違うフレーズ。笑 しかも、ちょっと変。でも、言いたいことはわかりました。 「頑張って」は、英語にしにくい。うちの夫も時々、使う。ガンバッテ、クダ サイ〜! Keep up the good job! という感じかな。 しかしJohnny、どうやって昨日の日本語の間違い(?)を認識したのだろう?それが知りたいけど、そういう(日本語の)質問は彼には難し過ぎるだろうと思って、聞きにくい。せっかく一生懸命、日本語で話してくれているのだから、日本語で返してあげたい。 ちなみに、アン(仮名)は、以前わたしが補習校で受け持った生徒。彼女はいつもお弁当を持ってくるので、ランチを買うことはない。でも、たま〜に「m先生、元気〜?」と、顔見せに来てくれる。とても優しい子だ。小さなアーティストも素敵なお嬢さんになりました。