異物
Aug
10
羽田空港で大勢の外国人を目にしたとき、なぜかホッと安心した。
見送りに来ていた娘にそう伝えると、「あら、もうそういう域に達してしまったのね」と驚かれた。自分でもそう思う。
8月、娘と某駅で待ち合わせをした際、彼女と落ち合う前に駅構内のトイレへと立ち寄った。
用を済ませて手を洗っていると、後方から
Excuse me, is this yours?
と声をかけられた。
振り返ると、30-40代の女性がプラ袋を差し出している。
さっき使ったトイレ内の棚にあった、置き忘れ(?)のプラ袋だ。
No, that is not mine, but thanks!
彼女はプラ袋を目の高さまで持ち上げていたままの姿勢でわたしを見つめていたので、
Someone must have left it. You can put it back there, I think?
そう返すと、彼女は Oh, okay...と言い、そのトイレに入った。
英語で話しかけられたということは、外国からの観光客だろう。アジア系だと思う。褐色の肌をしていた。
あのプラ袋にはお弁当が入っていたように見えた。新しいものか、食べ終えたものなのかはわからない。気付いたけれど、触らなかったからだ。もし重かったら、新しいお弁当を忘れていったのだろう。そしてもし軽かったとしたら、(多分)ゴミとして置いていったのかもしれない。
娘にこの話をすると、コロナ以来、みんな未知のものにはあえて触れないようにしていると思う、と言っていた。
そう言われてみるとそうかもしれない。けど、バイ菌とかウィルスとかではなく、「異物」として見てしまうから触らないのだと思う。少なくともわたしの場合はそう。爆発物?とかである可能性も無きにしも非ず。考えすぎかもしれないけれど。
そういう意味では、何の疑問も持たずにわたしに差し出したあの彼女は、とても素直な人なのだろう。或いは鈍感、危機感がない?(←自分、何様よって感じだけど)
英語で話しかけられたので、思わず英語で返したのだが、しばらく日本語オンリーの生活だったので、新鮮かつ懐かしく感じた。
実は今回の帰国ではなぜかiMessageもFaceTimeも使えなかったので、夫とのコンタクトがほぼ出来なかった。よって、英語を使う機会があまりなかった。たまーに娘と話す程度。
娘と歩いていると、先の女性が白人男性とティーンの女の子と一緒に歩いているのが見えた。女の子は二人の間に生まれた娘なのかもしれない。
プラ袋は持っていなかった。
彼女は日本という国に(東京に?)少しがっかりしたかもしれない。
わたしもそう。