認知症列車事故、家族が逆転無罪
本日、最高裁判所で良識ある判決がくだされた。
認知症をかかえる男性が電車にひかれて死亡した事件をめぐり、家族に列車が遅れたことに伴う損害賠償をJR東海が請求して裁判になっていた問題である。
認知症を抱える方を支える家族の苦労は大きなものがあり、介護は家族の私的問題ではなく、社会全体で支えるものとして介護保険がはじまったはずだ。
ところが、地方裁判所、高等裁判所では、JR東海の訴えが認められ、同居の妻や、離れた場所で暮らす長男の監督責任が問題になり、家族に損害賠償の支払いを命じるとんでもない不当な判決だった。
もし、最高裁判所でも同じような判決がくだされれば、悪しき前例・判例となるところだった。家族からすれば、認知症による問題行動を24時間絶え間なく見守るなどということは到底不可能であり、社会的なサポート体制も十分ではない。
家族が交通事故にあったという悲報を受けるだけでも大きな苦しみなのに、さらに、自分の家族を轢き殺した鉄道会社から事故の遅延にともなう賠償金を請求されるなんて不合理すぎる。
社会全体で見ても、家族にそこまでの介護や安全管理の義務を背負わそうとするならば、ますます介護への家族の協力をとりつけることは難しくなり、家族・親族間で誰が介護するか責任の擦り付け合いも起きかねない。
JR東海の責任は重大である。
それに加えて、介護の社会化の意味を理解しない不当な判決をだした、名古屋地方裁判所、名古屋高等裁判所も問題だ。
最高裁判所長官は内閣が指名するため、これまで政府の意向を受けて、一審、二審で出された画期的判決が最高裁では覆され悪い結果となることも少なくなかった。
しかし、今回は最高裁判所が良識ある判断を下して、一審、二審の判決をひっくり返したという点で、本当に良かった。
この問題を考える最大のポイントは、介護は家族の責任ではなく、社会で支えることをめざすことが政府の国民への約束であるという点だと思う。
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認知症男性JR事故死
家族側が逆転勝訴 最高裁
愛知県大府市で認知症の男性(当時91歳)が1人で外出して列車にはねられ死亡した事故を巡り、JR東海が家族に約720万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は1日、男性の家族に賠償を命じた2審判決を破棄し、JR東海側の請求を棄却した。家族側の逆転勝訴が確定した。
事故は2007年に発生。男性が列車にはねられた事故で、JR東海が「電車に遅れが出た」として同居の妻や首都圏に住んでいた長男らに約720万円の支払いを求めた。
民法は、責任能力のない人が第三者に損害を与えた場合、代わりに親などの監督義務者が責任を負うとする一方、監督義務を怠らなければ例外的に免責されると定めている。
1審・名古屋地裁は長男を事実上の監督者と判断し、妻の責任も認定。2人に全額の支払いを命じた。一方、2審・名古屋高裁は長男の監督義務を否定したものの「同居する妻は原則として監督義務を負う」として、妻には約360万円の賠償責任があると判断。JR側と家族側の双方が上告していた。【山本将克】
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Posted at 2016-03-01 15:30
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Posted at 2016-03-01 23:54
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