組合潰しがあったかどうかな事案
Oct
12
より
平成23年9月30日
【照会先】
報道関係者 各位 第三部会担当審査総括室
室長 榎本重雄(直通電話) 03-5403-2172
緑光会不当労働行為再審査事件
(平成21年(不再)第51号)命令書交付について
中央労働委員会第三部会(部会長 都築弘)は、平成23年9月29日、標記事件に関する命
令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。
命令の概要は、次のとおりです。
【命令のポイント】
~ 本件審査における証人の証言からは、法人が分会員らに対し、組合からの脱退を働きかけたとは認められないことから、法人による支配介入があったとはいえないとした事案~
本件審査において証人として採用した元分会員H(以下「H」という。)の証言から
は、法人理事長がHに対し「外部は邪魔だ」などと述べて組合からの脱退を働きかけ、更にその意を受けたHが分会執行委員らに組合からの脱退を働きかけ、その分会執行委員らが分会員に対して組合からの脱退を働きかけたとは認められないことから、法人による支配介入の事実があったとはいえない。
Ⅰ 当事者
再 審 査 申 立 人 : 全国一般埼京ユニオン(以下「組合」)(埼玉県さいたま市)
組合員約350人(平成20年10月現在)
うち分会員数名(平成20年10月現在。最大時で140名)
再審査被申立人 :医療法人緑光会(以下「法人」)(埼玉県東松山市)
従業員250名(平成20年10月現在)
Ⅱ 事案の概要
1 本件は、法人が、
(1)分会員らに対し組合からの脱退を働きかけたこと、
(2)分会が行ったカンパ要請行為を恐喝に当たるなどと述べて組合活動を妨害したこと、
(3)①組合によるカンファレンスルームの使用を拒否して組合活動を妨害したり、
②分会員の組合脱退後に結成された院内組合の結成及び活動に際し、カンファレ
ンスルームの使用等の便宜を図った
ことが、労組法第7条3号の不当労働行為に当たるとして、20年10月7日、埼玉県労委に申し立てた事件である。
2 初審埼玉県労委は、いずれも不当労働行為に当たらないとして棄却したところ、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。
Ⅲ 命令の概要
1 主文
本件再審査申立てを棄却する。
2 判断の要旨
(1) 法人は、分会員らに対し組合からの脱退を働きかけたか
ア 分会執行委員Tは、Hから法人理事長が「外部は邪魔なんだと言っている」旨聞いたと証言し、法人理事長は、Hと会ったことも電話で話をしたこともないと証言したが、何れの証言も直ちに採用することはできなかった。
そこで、本人のHに対して証人尋問を行ったところ、Hは、法人理事長に会った際、法人理事長がHに対し「外部は邪魔だ」などと述べて、Hに対して組合からの脱退を働きかけたり、理事長がHを通じて分会員を組合から脱退させるよう働きかけたとの証言はしなかった。
このように、理事長発言を直接聞いたHの証言によっても、法人理事長がHに対して「外部は邪魔だ」などと述べ、組合からの脱退を働きかけ、更に法人理事長の意を受けたHが分会執行委員らに対して組合からの脱退を働きかけたことを認める証言は得られなかった。
イ また、短期間に分会員全員の脱退届134通が組合に届いた経緯をみると、個々の組合員だけでない組織的な対応がうかがえるが、本件においては、法人の管理者が分会員に脱退を勧奨した事実は認められず、他に法人が脱退に関与したことをうかがわせる事情はない。
ウ さらに、看護部長がHに対し、組合執行委員長が病院に対し「理事にしろ」と言ってきているから注意した方がよいと述べたり、法人理事長がHに対し、外部の組合の指示で行っているのであれば、法的対応も考えなければいけないと述べていた状況から、法人が組合に対し強い関心をもっていたことはうかがえるが、上記のとおり、法人理事長がHに対し「外部は邪魔だ」と述べた事実は認められず、その他法人が分会員の脱退に関与した事実は認められない。
エ したがって、法人が、分会員らに対し、組合からの脱退を働きかけたとは認められない。
(2) 法人は、分会が行ったカンパ要請行為を恐喝に当たるなどと述べて組合活動を妨害したか
ア 分会執行委員Wは、同人らのカンパ要請行為について、事務長から恐喝云々と は一切言われていないと証言しており、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
イ したがって、事務長が、組合に対し、カンパ要請行為について恐喝に当たるなどと述べたとは認められない。
(3) 法人は、
①組合によるカンファレンスルームの使用を拒否して組合活動を妨害し、
②院内組合の結成及び活動に際しカンファレンスルームの使用の便宜を図ったか
ア 上記①については、 法人は、院内組合結成前は、組合からのカンファレンスルーム使用申入れに対し、職員以外の者が病院に出入りすることは精神科病院のため患者に悪影響を与えるおそれがあるなどと使用を拒否したが、これには、治療の観点からの必要性と合理性がある。また、院内組合結成後は、カンファレンスルームの使用に際し使用届を提出させるようにし、同届の提出により、組合にも使用を許可するようになったが、この法人の対応は、院内組合が結成されたという事情変更に伴い両組合を平等に取扱う要請が生じたため、かかる要請を精神科病院の治療上の必要性に優先させたものであり、組合からのカンファレンスルームの使用申入れを拒否した際に明示した職員以外の者が病院に出入りすることは精神科病院のため患者に悪影響を与えるおそれがあるなどとする理由の合理性が失われることにはならない。
したがって、組合によるカンファレンスルームの使用を拒否した法人の対応が、カ ンファレンスルームの使用を拒否して組合活動を妨害したものとはいえない。
イ 上記②については、法人は、組合に対してはカンファレンスルームの使用を拒否していながら、院内組合に対しては、結成準備段階及び結成後にカンファレンスルームの使用を許可していたが、法人は、職員からの利用申出があれば原則として利用させていたことなどからすれば、職員に対してカンファレンスルームを利用させていたという認識しかなかったのであるから、結果的にカンファレンスルームが院内組合に使用されたからといって、法人が院内組合の結成を支援したり、院内組合の活動に便宜を図ったとはいえない。
ウ したがって、カンファレンスルームの使用に関する法人の対応は、支配介入には当たらない。
【参考】
初審救済申立日 平成20年10月7日(埼玉県労委平成20年(不)第6号)
初審命令交付日 平成21年12月10日
再 審 査 申 立 日 平成21年12月15日
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分会の組合員数が最大で140名で現在は数名にまで落ち込んでいるのを見ると、組合潰しがあったと主張するのも当然かなと思いますが・・・
Hや他の組合員が何故脱退したのでしょうか・・・
分会執行委員長の証言の裏付けとして、脱退した元組合員のHに証人尋問するしかありませんでした。
別のポイントは、精神病院・精神科のある施設では、外部の人間を施設内に入れない事に対して、治療の観点から必要性と合理性があるという点です。
院内組合は、外部組合に対抗するために意図的に組織されたのでしょうか、自然発生的に組織されたのでしょうか・・・
色々と考えさせられる事案です。
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