トタン屋根の幸せ(布団は雲の上のように)
Sep
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最近では、コロニアルというセメントや粘土などを基材にした薄い板状の瓦が普及しているようです。瓦屋根の家は暫し見ることがありますが、トタン屋根の家はもうほどんど見ることはなくってしまいました。近所には年代を感じられるアパートあり、その一軒だけがまだトタン屋根のまま残されています。
昭和の経済成長期に瓦屋根とは違い、コストが低く加工しやすいトタン屋根が施工されるようになったのでしょう。私の家もまさにそのトタン屋根の家でした。記憶を辿り小学生の時、赤い屋根が緑に色を塗り変えられたことを覚えています。たぶん、表面のペンキが剥げてくると色を変えて染めていたのでしょう。屋根の色を変えると家の外観は雰囲気が違ってしまい、前の色を想い出してはなんだか寂しくなったものです。
今でも忘れないトタン屋根での想い出があります。我が家では、日曜日に晴れていると二階のベランダから緩やかな傾斜のトタン屋根に、布団を四枚ほど放って並べていました。トタンは太陽の光でとても熱くなり、素手で触ると火傷しそうなくらい。そこに乗せられた布団は上から下から熱を吸収して、寝そべると程よい肌触りの温度になっています。
子どもでしたから、そこにで横になって太陽の光を浴びながら気持ちよくなるのです。寝てしまい転がってしまえば、大変なことになってしまうのですが、心地よく浅い眠りを……。まあ、それで屋根から落ちたことはなかったので、熟睡したことはなかったようです。布団が紫外線を浴び青梅綿からする、すんっとした匂いが私はとても好きでした。なので、日曜日に雨なんて降った時には、がっくりしていたものです。
今、大人になり自分の家を持つようになり、日曜の晴れの日にはベランダの手すりに布団を干し、匂いを嗅ぐと私はその頃の雲の上のような幸せを想い出します。
ああ、もう一度あの感覚を味わいたい。無性に懐かしさに掻き立てられるのでした。
(トタン屋根に響く雨音も良くて、そちらの話も後ほど……)