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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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昭和の図面書き職人(東京編)

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あっし(あたし・わたし)は外の空気が吸いくなりまして、設計事務所を抜け出しタバコを吸っていたのであります。そこへ、課長さまがいらっしゃって「仕事が詰まってんだから、事務所に戻ってとっとと書け」なんて、申しましてあっしのくわえていたタバコをつまんで、ポイって投げてしまうのですから、いただけない話で。課長さまは図面も書かずにひとの尻しか叩くことしかできない、へっぽこ野郎でございます。あっしが会社のためどれだけ身を粉にして働いているのかなんて、雲の上の話なのでしょう。広尾ガンガンヒルズのサッシ(窓枠の建材)を全棟、あっしが全て徹夜して線を引き続けたというのに、課長さまは「取引先へ行ってくる」と、おっしゃりパチンコへ行かれてしまうのですから、間尺に合わないことでございます。あの方が課長さまなのですから、あっしはもうこの会社にたいそう呆れちまった次第で。課長さまの頬に一発、食わらせていただき会社からさよならいたしましょう。そりゃ、スキッとするにちげえねえ、なんて思うのでございます。

まあ、あっしもこの業界で食っていかなきゃ生きていけねえ身、チンピラみてえなことはしたくはございません。なんせコブシが汚(けが)れるってえのは、いただけねえことと思いますし、この手は大事な商売道具ですから、課長さまを殴るにはもったいないでございます。なにかぎゃふんと言わせる企てはないかと考えたのです。そんなわけで、図面の締め切り三日前に仮病を使い会社を休むという流れになりまして。今、てえへん(たいへん)大きな仕事が入っていまして、その図面を書けるのはあっしだけ、同じ課の連中には無理なわけです。それで課長さまがあたふたすんのを想像しますと楽しくなったのでございます。

案の定、課長さまから電話が来まして。
「おい、齋藤くん、具合はいかがかな、お見舞いはバナナかい、メロンかい?」
なんて、手のひら返すようなこと課長さまがおっしゃり、あっしは僭越ながら言葉を返したのでございます。
「そうですね、きれいなお姉ちゃんがメロンをあーんと食べさせてくれたなら、治るかもしれませんが」って。
そしたら課長さまが、ほんとうに網目のついた大きなメロン数個とお姉ちゃんの裸の本を、えっちらおっちらと持ってやって来るのですから、おったまげたわけで。どんだけ、他力なんですかね。自分で図面ぐらい書きゃ済むのですから。けど、課長さまの書いた図面は現場のでいく(大工)から「ヘッタクソな図面だな」って、ほざかれるくらい使えねえ代物で。線もろくに引けねえ課長さまは、口だけは金魚みたいにパクパクしてしゃべり続けるのだから、滑稽で憐れにも思えてきやした。なんで、やっこさん(あの方)が課長さまになれたか、とんと理解できませんで。まあ、べっぴんさんのあの本をめっける(見つける)才だけは、右に出るものはございませんが。

結局、締切日も出勤しませんで、こんな会社なんて辞めようと思ったのです。それでもまた課長さまから電話がかかって来まして 、「具合はどうだ。もう、大丈夫なんだろう。頼むから、締め切りに間に合わせてくれ。今月分の給料は、少し色つけてもらうから、なあ、出勤できるだろ」って申します。
「するってえと、指五本分になりますかね」
あっしはぶっきらぼうに発しました 。
「んっ、二本が限界だ」
「あいたた、また頭が痛くなって」
「わかった、わかった、では三本出そう」
「四本。ここは、譲れませんよ」
「ふぅ〜、わかった四本な」
それで、事務所に行き特急並みの速さで図面、書きました。するってえと、課長さまがニタニタ顔してあっしの手を握りやがったもんだから、情けねえ男だねえ、なんて思ったのです。その後がさらによろしくございません。課長さま、あっしに爆弾を投げたもんですから。給料を指四本分の上乗せ、ってことだったのですが、一本は一万円ではなく、千円札を四枚上乗せた給料を渡してきたんですから、たまげてしまい、あっしの頭がドドンっと爆発したわけで。

けっきょく、課長さまの顔はもう拝みたくないと会社は辞めまして、あっしは自営で設計屋を始めたってわけです。それでも、課長さまが懲りずにまたあっしに仕事を依頼してきやがるのには、開いた口が塞がりません。そりゃ、あっしでないと書けない難しい図面で、札束を目の前にちらつかせて来るのですから、ここまで来ると尊敬してしまうのでございます。結局、あの手この手で、ひとにやらせて仕事を納めてしまうのですから、たいした玉ですわ。そこに課長さまが出世したわけがちらりと見えたわけです。けど、やっこさんを、いやいや課長さまをひととして認めたわけじゃありませんぜ。

「まあまあ、そう言わずお代は弾むから」
「図面、一枚を三千円の二十枚以上なら」
「二千円 が限界だな」
「仕事には困ってないので、ほかをあたってくださいな」
「なら、二千五百円でどうだ」
「それでは、即払い、ってことでおねえげしますぜ」
「わかった、助かる。では、やってくれるんだね」
「ガッテンでやんす」
それから、課長さまとは二十年の付き合いっていうのも、腐れ縁ってことですかね。七面倒くせえ付き合いをこなすのも、黒っぽい(プロの)稼業でやんすかね。

#詩

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