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詩は元気です ☆ 齋藤純二

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俺の居場所

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最近なんだか疲れすぎて……

夜中に眠れず近所を歩き出せば、
やはりおなじみの公園へたどり着くことになってしまう。
ほかに行くところはないのか。
いや、それすら考えることも面倒になり、
自分の中にある鬱蒼とした
つまらない俺をコンビニのゴミ箱に捨て公園へ向かう。
「なんか、嫌な感じがするもの、入っているぞ」
と、ゴミ箱を覗くアルバイトの兄ちゃんの声が
遠くから響いて聞こえてくる。
「ごめん、ごめん。
家庭のゴミ、いや、自分のグロテスクを投棄してしまった。
帰りにたくさんの買い物をして行くから許してくれ。
まあ、そんなことを言ってもアルバイトの兄ちゃんには
売り上げがどうだとか、関係ないよな」
と、ぼそぼそと長いひとり言。

公園は大好きだ。
なぜ好きか。
ひとりになれた感が心地よく、自分がここにいる感が満載だからだ。
孤独を今宵無く愛したい時がある。
じゃあ、部屋の中ではダメなのか。
ああ、ダメだね。
そこは俺の存在が濃すぎて、
自分のニオイにむせて他人になってしまうからダメダメ。
えっ、自分が他人って矛盾しているよ!
君はそう言うかもしれないが、
自分なんて所詮は他人、君が俺なんだからさ、何も恐れることなんてない。
僕のはじまりは君で、君の終わりは僕なんだから深く考えないことだ。
簡単なことだからさ。
感じればいいんだよ。

「くそっ! ここは、俺の席だぞ、どけよ!」
なんてことだ、ベンチならいくらでもあるのに、
どうして今日に限ってここに昨日の俺が座っているんだよ。
こいつは他人の自分だ。俺という他人で、昨日の俺だ。
いったい、どうすればいいんだ。
昨日の俺は、今日の俺の怒鳴り声などまったく怖くない。
すべて俺の考えなんてお見通しなんだからさ。
なら、昨日の俺を脅してこの席を奪い取るにはどうしたものか、
ん〜、
なんだかごちゃごちゃ世界に突入しているじゃないか、
おいおい。
得体のしれない、予想もできないものを人間は恐れる。
昨日の俺も人間。
例えば、どろ〜ん、
みたいに幽霊系で、昨日までの俺にはない
身につけたものはないだろうか。
ないな。
ん〜、かなりのインパクトがなければ、
昨日の俺、追い出し作戦は成功しないだろう。
そうだ真逆だ。
今までの俺のぐうたら自分からは考えられない、
なんだか熱い人間になればいい。
そうすれば、こいつは何を考えているんだ、
訳のわからない危ない奴だと逃げ出して行くだろう。

「あなたがここから消え去らないと、お尻ぺんぺんお仕置きしちゃうわよ!」
スネ毛ぼうぼう、内股スタイルで可愛く言ってみた。
「もう一回、言ってくれ。スマホで録音させてくれたら、消えてやるよ」
昨日の俺は目を輝かせながら言った。
「ああ、そうか、わかったよ。あなたがここから消え去らないと、
お尻ぺんぺんお仕置きしちゃうわよ!」
「あれ、録音失敗。もう一回!」
「あなたがここから消え去らないと、お尻ぺんぺんお仕置きしちゃうわよ!
「やっぱり、動画にさせてくれ!」
「おう、ノってきたぜ。あなたがここから消え去らないと、
お尻ぺんぺんお仕置きしちゃうわよ!」
腰に手をあて微笑む俺。
「オーケー、いいの撮れたから退いてやるよ。
ほら、座れよ。
しかし、お前、最低だな。
いったい何者だよ、まあ、どうでもいいや。
ごきげんよう」
昨日の俺は、消えて行った。
真逆作戦はなんだか一応成功?!
「あなたがここから消え去らないと、お尻ぺんぺんお仕置きしちゃうわよ!
う〜ん、癖になっちゃう」
新しい俺、発見。意外と今夜はいい日なのかもしれない。

やっとひとりになれた。
随分と疲れたようだ。
俺は昨日の俺が嫌いで、昨日の俺フェチじゃないということだ。
収穫、収穫。
「おい! 君は今、俺のことを見ているんだろう。
これだと、ひとりって言えないんだよ。
ああ、そう。
ええっ、俺のことを見てないって君は言うけど、
おもいっきり見ているじゃないか、俺のことを!」
なんて、突然、大きな声で話してみる。
反応なし。
間違いない、俺はひとりだ。

灰色の空、黒い雲、それは叙情的なただの夜空。
俺にとっては最高の陰日だ。
目立たぬようになるべく消えることに努める。
隠の癒しに浸るのが俺のステイタス。
まず、カラダを消してみる。
これがなかなか難しいんだ。
イメージ的には、空気をたらふく吸い込んで
カラダを薄めていくという作業。
これを取得するのに三年かかった。
まあ、俺じゃなきゃ一生無理な話だが、
最近は手軽に姿を消す方法、見つけたから教えてやるよ。
「ザ・馬鹿になれる実」だよ。
紙に「カバなバカはカバ」を上下、左右を逆さまに書く。
書き順も逆から書く。
それで、書いた紙をなるべく小さくして丸めて飲み込むんだよ。
この時のコツは、
小さく書いて、紙も小さく、なるべく飲み込みやすくすることだ。
もちろん、水は必須だよ。
でも、これ、俺の専売特許だから勝手に製品化したら、お仕置きだぞ!
ああ、話しそれた。
そんなんでカラダが消えるんだよ。
あっ、水を忘れた。
まあ、俺はベテランだから水なしで頑張るか。
「ザ・馬鹿になれる実」を飲み込む。喉、痛っ。

あとは意識をなくすことなんだけど、これも難しい。
成功率三十パーセント、って言うところだろうか。
深呼吸をして、豆腐の数を数えるんだよ。

「豆腐が一丁、豆腐が二丁、豆腐が三丁目イエイイエイ、
豆腐が四丁目の階段を上って、豆腐が五丁、豆腐が六丁、
豆腐が七丁八丁九官丁、豆腐が十丁、豆腐が十一丁、
豆腐が十二丁丁夫人、豆腐が十三丁、豆腐が十四、、
豆腐…とっ……と………くうっ…がっ
ぐっ、くうっ〜〜
がっ、くうっ〜〜〜
けっけっけ、くうっ
んがっ、くうっ〜〜、ふぅ〜〜

〜〜うっがっ、ああ、あああ、あああ、あっ

なん、なん、なんだよお前、昨日の俺じゃないか!
なんで、さっき消えて行ったじゃないか。
それに俺は、姿に気配も消していたじゃないか、
なんで声掛けられたんだよ、俺の姿が見えるなんて、
いったいお前は何者なんだ!」
「普通に見えていたし。
お前は、ただ居眠りこいてる馬鹿か、死にたい馬鹿か、
なんでもいいから、4Kの最新映像が撮れるスマホを持ってきたから、
さっきのやってくれよ!」
「はい? はい?
……俺は、俺は、ただひとりになりたいだけなんだよ、
あなたがここから消え去らないと、
お尻ぺんぺんお仕置きしちゃうわよ!
お尻ぺんぺんお仕置きしちゃうわよ!
お尻ぺんぺん…お尻り……
お、し、り!」


ふんがっふふ!
#詩

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