空気が捻れると 私の耳はそちらへゆく 図書館の床には 氷が張られた緊張がある 青年が受付で挨拶をする ここっこっこんにちは きょきょ今日は本を読みに ままっまっ参りました よろしくおおっ願いします 兵隊さんのように背すじを伸ばし 坊主頭を深々と下げる 身体の向きを変え もうひとりいた受付の方に 同じように挨拶する ここっこっこんにちは きょきょ今日は本を読みに ままっまっ参りました よろしくおおっ願いします こちらこそよろしくお願いします 信頼関係のある微笑みが見られる 私は誰を知っているというのだ ほんとうに誰かを知っているのか ここが何処かを知っているのか 青年は私の隣に座る 手にした本を天井に向けて 掲げながらまた挨拶をする よよっよっよろしくお願いします そう言って本を開く 私は思わず青年に声を掛ける 誰かを知りたくて 鉄道が好きなんですね 青年は確かに私を見た いったい誰なんだろうと この世に存在しないモノを 見たような目で いったい私は誰なんだ