図書館に通うようになり、ひとりの詩人がどうも気になって仕方ない。 そこそこ規模の大きな図書館ではあるが、豊富な在庫を抱えながらも「秋山 清 詩集」は一冊しかない。秋山清、アナーキストを貫いた詩人。1904年の生まれ。本の著作権保護期間が著者の死後50年であるから、中原中也や宮沢賢治の詩をブログでアップすることは可能だが、秋山清に関しては84歳まで生きられた方なので出来ない。残念。そんなことを言うと、大変失礼だがアナーキストとして戦中、戦後と一貫して反戦詩を掲げ、「さすらい」を全うした人物など日本ではもう出て来ないだろう。だから、反戦を考える上でのひとつのテキストとなり得る為、詩をアップしたかった。現代詩が訴えるべき「人類と戦争」という問題がそこに集約されている。 私の心に刺さった詩は、「象のはなし」という作品。戦争の為に象が殺されるのだが、銃弾では殺せず、毒薬も針が刺せず、けっきょく餓死させられてしまう。その象が最後の力を振り絞り前足をあげて優しかった飼育員に食物をねだり、そのまま前足から崩れて死んでゆく。国という政治の力を受け慄き滅びゆく動物(人間)。アナーキスト秋山清は、戦争に惑わされた心象スケッチを見事、かつ鮮明に描き切った詩人といえよう。 図書館の帰りに大手の本屋に立ち寄る。「秋山 清 詩集」を店員に探してもらうと、2001年発行の本が一冊、他店にあることがわかった。即、注文。少し本が黄ばんでいるということだが、全く問題なし。まさか、15年前に発行された本が本屋にあるとは、時間が止まったよ、一瞬。聞いてみるものだ。楽しみがひとつ増えた。