僕 × 旅をする
Jul
9
このままじゃ駄目なことは
自分が一番わかっているんだよ
夏休みも終わってしまうし
なんせ退屈だから
よしゃ
目的のない旅へ出よう
だけど
旅先で夢を見つけて将来に向かってGO
そんな考えは微塵もないよ
とりあえず歩き出した旅は順調
こんなに空を
見たことがあっただろうか
心のように黒ずんだり
どこまで爽やかな青だったり
空は僕たちと変わらないような心もようで
寄り添ってくれることを教えてくれた
テントを張り
眠る前に夜空を眺めていた
星は誰かが言ったように
宝箱をひっくり返し輝いている
そんな夜空を見ていても
風で草が摩る音を聴いていると
人恋しくなってしまって
今日の一日を振り返える
すれ違う見知らぬ人に
声なんて掛けることはできなかった
ほんとうは誰かと話がしたかったのに
初めて知る孤独という言葉
僕が心を開かないと何も始まらない
そんなことを旅は僕に教えてくれた
日は当たり前だが昇って
くすぐるように僕を起こした
いい天気ですね
田植えをするおじいさんに言ってみた
僕の勇気を振り絞った声は震えていたけれど
ああ、お天道様のお陰じゃだなあ
おじいさんの言葉は僕にとって
この空より遥かに澄んだ青を感じた
おばあちゃん
荷物が重たそうだね
持ってあげるよ
僕は悪い人間じゃないから大丈夫
ああ、そうかい
ありがとうな
じゃあ、神社の前までお願いするわ
おばあちゃんは
お礼にキュウリを三本もくれた
何よりも忘れられないのは
その時に触れた皺くちゃな手に
癒されていたこと
ひとの温かみから大切さを教わった
まだ僕の旅は始まったばかり
旅が僕にいろいろなことを教えてくれる
日常の日々も旅も
もしかするとたいして変わらないのかも
そう思えてきた
でも
もう少しこの旅を続けてみよう
もう退屈なんて言葉は他人のごとのように