彼は高校一年から大学四年まで アルバイトを続け 親からお小遣いをもらっていなかった 最近、パソコンを購入し 財布の中は小銭だけ 何年ぶりだろう 父親に五千円貸してくれと言うと 返さなくていいぞ、と小遣いをもらう そんな時に限って 悪いことは起きてしまうのだ 彼がアルバイト先の控え室にカバンを置き フロアでの仕事をひと段落つけて コーヒーを買おうとしたら 財布からお札が 抜き取られていることに気づく うちに帰り浮かない顔の彼 父親がどうしたんだと訊くと 悔しそうにお札が盗まれてたことを伝えた 父親は 今までアルバイトをしてくれてありがとう と五千円を彼に渡した 結局、彼はその五千円を使わずに 机の引き出しに入れた そこには亡くなった祖父からもらった 五千円も入っていた 彼はありがたく引き出しを押した