動けない朝はすでに日が暮れる 私の疲れた塊に薬が流れ 久しぶりの眠りの後は焦燥感 いつか何処かの回想に現実が濁る 消費する時間に慄いて 何も無かった休日の虚しさを 埋めるために実家へ急ぐ 母の為と言い訳をしながら 流しの食器を洗う手が速まる 歩道の端に積まれた雪 柔軟な心を忘れて固まった塊 溶けて無くなるのを待つだけの轍 カタチは時間を想像させ 苦笑いのように反射する光の鈍さ 揺れる電車には能面が並ぶ 私が心を動かさなければ 世間は隙間から冷たさを吐き出す 開いたドアは閉じる往復を忘れ 終着駅からも追い出される 年老いた母が雪を掻く 玄関までの三十センチ幅の小道 目の高さにある蝋梅から 過ぎた時間を埋める香りがした