闇コーヒー
Apr
12
行かなくてはいけない
場所があった
風が吹き終わる場所
三丁目にある真っ暗な喫茶店
ドアが開く音でオーナーが
いらっしゃいませ、と
低い声を響かせる
ドアが閉まると
テーブルも椅子も
見えなくなってしまい
手探りで席につこうとする
オーナーの姿は
未だ見たことがない
コーヒーのいい香りはするが
テーブルに置かれたカップを
いつも指を引っ掛けて
こぼしそうになる
しかし美味い
実に美味いコーヒーである
香り深み温度と
陶器の口触りから流れ
魅惑へ誘(いざな)ってくれる
見えない店内の
見えないコーヒーを飲む
情報は限りなく少なく
時間とコーヒー
今日もここへ来てしまう