五分を知らない 歯も磨かず、風呂にも入らず 床が誘っていた ここで横になりなさい、と 倒れ込めば手のひらが 床を握っていた ちょっとくらいいいか、と 瞼は落ちたがっている ほらっ、寝入った…… ……おっと、寝てしまったようだ 五時間ほど経っただろうか 時計を見ると五分しか経っていない いや、もしかすると 二十四時間五分も経っているのかも とても深く質の良い時間を感じたような…… 起き上がり階段を降りる やはり身体は重たい そしてデバイスのホームボタンを押し 指紋認証で画面を表示 五分が経っていただけだったのだ 今日という日を見た ああ、この五分の話はすべて夢だ 寝ているのか、生きているのかも 怪しくなっている 床に身体が半分埋まっているんだ きっと